2 刑事訴訟法の制定 (1) 応急措置法 終戦後,昭和21年1月には戦時刑事特別法は廃止され,同年11月には日本国憲法が公布(22年5月施行)され,同憲法中には,人権の保障を主眼とする,憲法31条以下の刑事訴訟に関する諸規定が定められた。それらの多くは英米法に由来している。 そこで,旧刑訴法中の新憲法に適合しない規定を改めるなどの応急的措置を講じるため,昭和22年4月には日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第76号)(以下「応急措置法」という。)が公布(同年5月施行)された。同法は,勾留中の被疑者の弁護人選任権及び被告人に対する国選弁護制度の各新設,強制捜査に裁判官の令状を必要とすること,不利益な供述の拒否権を認めること,自白の証拠能力及び証明力の制限,予審の廃止等を内容とした。 (2) 刑事訴訟法 昭和23年7月,現行の刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)が公布(24年1月施行)され,これによって刑事訴訟手続に大きな変革がもたらされた。 現行刑事訴訟法は,日本国憲法の精神にのっとり,実体的真実の発見並びに被告人及び被疑者の人権保障を基本理念として,大陸法系の理念や規定に英米法のそれを大幅に加えたものである。旧刑訴法からの主要な改正点は,[1]起訴状一本主義を採用し,予審制度を廃止したこと,[2]公判審理及び証拠に関して公判中心主義を徹底し,自白の証拠能力及び証明力の制限,伝聞証拠の制限等を規定したこと,[3]強制捜査は,原則として,あらかじめ発する裁判官の令状を得て,検察官,司法警察職員等が行うとしたこと,[4]被疑者及び被告人の供述拒否権,拘束中の被疑者の弁護人選任権をそれぞれ認めたこと,[5]被告人に対する国選弁護の制度や勾留理由開示の制度をそれぞれ設けたこと,[6]控訴審を事後審に改めたこと,[7]単なる法令違反のみでは上告理由とはならないとしたこと,などである。 なお,現行の刑事訴訟法は昭和24年1月1日から施行されたが,刑事訴訟法施行法(昭和23年法律第249号)によって,現行の刑事訴訟法施行前に公訴の提起があった事件については,同法施行後も,なお旧刑訴法及び応急措置法によるとされ,施行の際まだ公訴の提起されていない事件について,現行の刑事訴訟法が適用されることとなった。
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