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犯罪被害者又はその家族に対する損害の補償は,本来加害者が行うべき民事上の問題である。しかし,加害者には十分な資力を有しない者も多く,犯罪被害者の救済のため,国の積極的な関与を必要とする場合がある。国が行っている被害者救済制度としては,犯罪被害者等給付金支給法(昭和55年法律第36号)及び自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に定められたものがあり,また,事実上犯罪被害者救済の機能を営むものとして,証人等の被害についての給付に関する法律(昭和33年法律第109号)に基づくものがある(自動車損害賠償保障法については,本編第2章第2節1参照。)。
犯罪被害者等給付金支給法は,昭和49年に発生した過激派集団による無差別爆破事件を契機に,こうした爆弾事件やいわゆる通り魔殺人の被害者が実質的にはほとんど救済されないという実情から,この制度の新設を求める世論が高まったという社会的背景の下,55年5月に公布された(56年1月施行)。 証人等の被害についての給付に関する法律は,当時暴力団による悪質な事犯が多発する中,暴力関係事件の捜査又は審判に関し,証人,参考人やその近親者等に対する傷害,暴行等の暴力事犯の発生を見るという社会事情の下,刑法及び刑事訴訟法の一部改正(本編第2章第1節2及び第2編第2章第1節3参照)と併せて昭和33年4月に公布された(33年7月施行)。 |