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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第一章/二/3 

3 在学非行少年の増加

 つぎに,最近の非行少年の動向でとくに著しいのは,在学非行少年増加の傾向である。
 これは,前述のように(本編第一章一「2少年刑法犯の推移」参照),低年令層の少年が非行化する傾向が著しいことにもよるが,他方,進学率の上昇により,学生および生徒数が増加しつつあることにもよるものと考えられる。
 警察で検挙された刑法犯少年(触法少年を含む。)の推移についてみることにする。III-24表でみると,昭和三〇年には,有職者三七%,無職者二五%,学生・生徒は三八%であったが,昭和三九年には,有職者三二%,無職者一〇%,学生・生徒五八%であり,有職者,無職者の割合が減少し,学生・生徒の割合は著しく増加している。そして,昭和三九年に,学生・生徒の割合が,刑法犯少年の検挙人員のうち,半数以上を占めていることは注目すベきである。

III-24表 職業の有無別刑法犯少年検挙人員(昭和30,35,39年)

 さらに,学生・生徒を,学校程度別に,在学生数と対比してその推移をみるとIII-25表のとおりである(なお,大学生は,その半数以上は成人に達しているので,ここでは,小学生,中学生,高校生について検討する。)。

III-25表 学校程度別刑法犯検挙人員(昭和30,35,39年)

 まず,小学生は,昭和三〇年には小学校在学生一,〇〇〇人に対する刑法犯検挙人員は一であったが,昭和三五年にはその割合は一・九に,昭和三九年には二・一と,この一〇年間に二倍に増加している。中学生は,昭和三〇年に中学校在学生一,〇〇〇人に対する刑法犯検挙人員は四・四であったが,昭和三五年にはそれは八・三に,昭和三九年には一二・〇と著しい増加をみせている。また,高校生では,昭和三〇年に高校在学生一,〇〇〇人に対する刑法犯検挙人員は二・八であったが,昭和三五年には五・一に,昭和三九年には七・六となり,中学生の場合と同様に著しい増加である。
 つぎに,学校程度別と刑法犯罪種別との関係をみると,III-26表のとおりである。

III-26表 学校程度別刑法犯主要罪種別検挙人員(昭和39年)

 小学生では,大多数が窃盗であって,その他の罪種のものは少ない。中学生でも,全体の約八〇%は窃盗であるが,恐かつ,暴行などの粗暴な行為もそれぞれ五%ほどみられる。しかるに,高校生になると,窃盗は全体の半数以下になり,恐かつ,暴行,傷害などの粗暴犯の割合が増加し,全体の三〇%近くを占めている。ただ,学生・生徒には,強盗,殺人,放火などの兇悪犯罪は,きわめて少ないといえる。
 また,昭和三九年に全国の家庭裁判所で処理した刑法犯少年の事件について,学校程度別に,在学中,学校内で問題行動があったかどうかについてみると,III-27表のとおりである。これによると,学校内ですでに問題行動のあったものは,小学生がもっとも多く,全体の六五%あり,中学生では四五%,高校生で一九%である。さらにその内容についてみると,小学生では半数以上が長欠・怠学によるものであるが,中学生,高校生となるとこの割合は減少し,不良グループと関連をもつものの割合がかなり多くなっている。在学生の非行問題に関して一つの参考とすべき事実と考えられる。

III-27表 学校程度別在学中の問題行動(昭和39年)