前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和4年版 犯罪白書 第7編/第5章/第1節/3

3 特に注目すべき犯罪の動向

特殊詐欺の令和2年における認知件数は、前年比19.6%減と大きく減少した。その原因や新型コロナウイルス感染症の影響の有無については断定できないものの、同感染症感染拡大下において、人と人との接触が避けられたことにより、面識のない被害者と対面して財物を詐取するなどの態様による犯行が困難となっていた可能性も考えられる。

サイバー犯罪は、令和3年の検挙件数が前年比23.6%増と特に増加しており(第4編第5章第1節参照)、企業・団体等におけるランサムウェア被害の報告件数についても3年下半期において前年同期から大きく増加しているが、その原因としては、テレワークの増加を含む様々な要因が考えられることからすると、今後、新型コロナウイルス感染症感染拡大が落ち着いたとしても、引き続き十分な警戒が必要である。

児童虐待や配偶者からの暴力の相談(対応)件数・検挙件数については、新型コロナウイルス感染症感染拡大以前から増加傾向又は高止まりが続いており、令和2年及び3年における増加又は高止まりが同感染症の影響によるものか否かは判然としない。もっとも、海外では、都市封鎖下において、家庭内暴力が増加したことが報告されている地域もある。我が国においても、外出自粛等により加害者に監視され続けている状態で通報等が困難であった被害者が存在した可能性があり、暗数の存在も考えられるところである。

違法薬物の密輸入は、新型コロナウイルス感染症感染拡大によって、大きな影響を受けた。令和2年は、特に携行型の犯行態様が多い覚醒剤について、航空機旅客による密輸入の摘発件数が前年から激減しており、これは入国者数激減に伴うものと言える。他方で、大麻については、国際郵便物を利用した密輸入が多かったため、2年の摘発件数は大きく減少しておらず、同感染症の影響をそれほど受けなかった可能性が考えられる。なお、金の密輸入事件の処分件数についても、令和2事務年度(令和2年7月1日から3年6月30日まで)は前事務年度から激減しており(第4編第4章第1節参照)、関税法改正による罰則強化や取締りの強化に加え、入国者数の激減により航空機旅客による犯行が困難となったこともその一因である可能性が考えられる。

来日外国人については、短期滞在の正規滞在者において、新規入国者数が大きく減少した影響を受け、令和2年及び3年の刑法犯検挙人員は大きく減少した。これに対し、技能実習の不法残留者においては、2年、3年共に刑法犯検挙人員は前年と比べて増加したが、不法残留者数自体が、2年1月1日時点で前年同日時点と比べると大きく増加しており、3年1月1日時点においても前年同日と比べて増加していることを考え合わせると、検挙人員の増加は滞在人口の増加に伴うものであった可能性もある。