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令和4年版 犯罪白書 第7編/第5章/第1節/2

2 主な犯罪の動向

刑法犯認知件数を見ると、令和2年は前年比17.9%減と前年から大きく減少し、3年も更に減少(前年比7.5%減)したところ、月別で見ると、初めて緊急事態宣言が発出された2年4月及び5月において、それぞれ前年同月比23.9%減、同32.1%減と特に大きく減少した。その後、3年3月までは、前年同月比の減少率はいずれの月も14%を超えており、そのうち20%を超えたのは、2年7月から9月、12月及び3年1月であった。平成27年から令和元年までの同月の認知件数の平均値を100とした指数で見ても、2年4月及び5月は、それぞれ63.1、54.8であり、同年1月から3月までの指数の平均77.0と比べると顕著に低く、同年6月以降も61~68台という低い水準を維持し、3年は、1月、5月、7月、8月及び10月に60を下回った。このように、2年及び3年においては、それ以前と同様に刑法犯の認知件数の減少が見られたが、特に最初の緊急事態宣言があった2年4月及び5月は、近年の減少傾向を考慮しても、それを上回る水準の減少であった。

この傾向は、窃盗においても同様であり、刑法犯の認知件数の減少は、その7割近くを占める窃盗の減少に伴うものであると言える。窃盗の手口別で見ると、侵入窃盗では、その他を除く各手口(空き巣、忍込み、事務所荒らし及び出店荒らし)において、令和2年は前年比23.7~29.6%減といずれも前年からの減少率は昭和49年以降で最高を記録し、令和3年も出店荒らしは前年比26.7%減と更に最高を更新し、空き巣及び事務所荒らしも2年に次ぐ減少率であった(それぞれ前年比19.7%減、同22.2%減)。これに対し、非侵入窃盗では、ひったくり、すり、自動販売機ねらい、置引き及び仮睡者狙いは、2年にいずれも前年比40%以上減と大きく減少し(それぞれ前年比43.5%減、同54.7%減、同49.7%減、同42.2%減、同43.6%減)、そのうち、ひったくり、すり、置引き及び仮睡者狙いは3年も前年比20%以上減と更に大きく減少した(それぞれ前年比38.0%減、同22.1%減、同24.7%減、同25.5%減)のに対し、万引きは、2年は前年比7.0%減、3年は同1.2%減と減少はわずかであり、払出盗は、2年は同51.1%増と増加し、3年も同6.0%減と減少はわずかであり、手口によって差が見られた。

主な刑法犯では、強制わいせつの認知件数は令和2年4月及び5月、強制性交等は2年5月において、それぞれ平成27年から令和元年までの同月の平均値と比べて顕著に少なかった。

窃盗を始めとする刑法犯認知件数の減少理由については、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による外出自粛要請(いわゆるステイホーム)により、在宅人口が増加し、駅や繁華街の人流が減少したことから、犯罪被害のターゲットとなる留守宅や通行人等が減少したことなどが考えられる。なお、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴う飲食店の営業時間の短縮等により、飲酒機会が減少し、酔余の上の犯行等も減った可能性も考えられるところ、酒気帯び・酒酔い(道交違反)の取締件数は、平成26年から令和元年までは2万5,000~2万7,000件台で推移していたが、2年は2万2,458件(前年比11.7%減)、3年は1万9,801件(同11.8%減)と大きく減少した(4-1-2-7図CD-ROM参照)。また、電車内における事案が多い迷惑防止条例違反の痴漢事犯の検挙件数が2年に大きく減少したこと(第1編第2章第1節参照)についても、企業等の出勤回避、学校等の一斉臨時休業等により、通勤・通学人口が減少したことが影響したものと考えられる。

交通事故も、交通量の減少を背景に、令和2年4月及び5月において、前年同月と比べて大きく減少した。

他方で、少年非行については、全体として減少傾向にある中で、少年の刑法犯検挙人員は、令和2年4月及び5月も前年同月と比べて大きな減少が見られず(前年同月比0.4%増、同4.4%減)、むしろ同年3月には前年同月を大きく上回る(同35.0%増)など、刑法犯認知件数とは異なる動向を示していたものであり、学校等における一斉臨時休業等によりかえって非行の機会が増えたなど、少年特有の事情があった可能性も考えられる。