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令和3年版 犯罪白書 第8編/第3章/第1節/3

3 裁判
(1)終局裁判

8-3-1-35図は,詐欺について,地方裁判所における終局処理人員の推移(最近20年間)を見たものである。地方裁判所における終局処理総人員については,平成16年(7万9,378人)をピークに減少傾向を示している一方,詐欺の終局処理人員は,18年(5,425人)まで増加し続けた後,一旦減少し,21年(5,422人)に再び増加したのを経て,22年以降は減少傾向にあり,30年以降は3,000人台で推移していたが,令和2年は2,943人(前年比17.4%減)であった。

地方裁判所における終局処理総人員に占める詐欺の終局処理人員の比率は,平成18年以降,7%台から8%台の間で推移していたが,30年以降は低下し続け,令和2年は6.4%(前年比1.1pt低下)であった。

詐欺について,地方裁判所における終局処理人員のうち無罪の人員は,最近10年間においては5人から20人の間で推移しており,令和2年は6人であった(司法統計年報による。)。

8-3-1-35図 詐欺 地方裁判所における終局処理人員の推移
8-3-1-35図 詐欺 地方裁判所における終局処理人員の推移
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(2)科刑状況

詐欺について,平成13年・23年・令和2年の地方裁判所における有期の懲役の科刑状況別構成比を見ると,8-3-1-36図のとおりである(なお,平成16年法律第156号による刑法の改正(平成17年1月施行)により,有期刑の上限が15年から20年に,死刑や無期刑を減軽して有期刑とする場合の長期の上限が15年から30年に,有期刑を加重する場合の長期の上限が20年から30年にそれぞれ引き上げられた。)。なお,特殊詐欺(本節1項(3)参照)の認知件数が増加したのが平成15年頃以降であることに留意する必要がある。

実刑の者(令和2年については一部執行猶予の者も含み,一部執行猶予は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。)の構成比を見ると,平成13年(53.5%)が最も高く,23年(48.6%)及び令和2年(47.2%)は,ほぼ同程度である。2年以上3年以下の実刑の者の構成比は,平成13年(18.1%),23年(18.8%)及び令和2年(20.1%)の間に大きな差は認められない。しかしながら,2年未満の実刑の者の構成比は,平成13年(29.4%)が最も高く,次いで,23年(20.5%),令和2年(13.0%)の順となっているのに対し,3年を超える実刑の者の構成比は,同年(14.2%)が最も高く,次いで,平成23年(9.3%),13年(6.0%)の順となっている。特に,3年を超え5年以下の実刑の者及び5年を超え10年以下の実刑の者の構成比は,13年にはそれぞれ5.2%,0.7%であったのが,令和2年にはそれぞれ11.3%,2.8%となっている。また,全部執行猶予の者を見ても,2年以上3年以下の者の構成比は,平成13年には20.3%であったが,23年には26.3%,令和2年には30.9%となっている。なお,10年を超え30年以下の実刑の者の人員は,最近20年間は10人未満で推移しており,令和2年は2人であった(CD-ROM参照)。また,詐欺により一部執行猶予付判決を受けた者は,平成30年に1人,令和元年に2人及び2年に3人であった(司法統計年報による。)。

8-3-1-36図 詐欺 地方裁判所における有期刑(懲役)科刑状況別構成比
8-3-1-36図 詐欺 地方裁判所における有期刑(懲役)科刑状況別構成比
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8-3-1-37図は,詐欺について,地方裁判所における全部執行猶予率及び全部執行猶予者の保護観察率の推移(最近20年間)を見たものである。全部執行猶予率について見ると,平成16年以降は50%台で推移し,令和2年は52.8%(前年比0.7pt上昇)であり,全体の地方裁判所における有期懲役・禁錮の全部執行猶予率(63.0%。CD-ROM資料2-4参照)よりも低い。

詐欺について,地方裁判所における全部執行猶予者の保護観察率を見ると,平成13年(15.7%)以降,低下傾向にあり,特に,28年(7.2%)以降低下が続き,令和2年は5.9%(前年比0.3pt低下)であった。

なお,令和2年に詐欺により一部執行猶予付判決を受けた者(3人)については,その全員が保護観察に付された(2-3-3-1表参照)。

8-3-1-37図 詐欺 地方裁判所における全部執行猶予率・全部執行猶予者の保護観察率の推移
8-3-1-37図 詐欺 地方裁判所における全部執行猶予率・全部執行猶予者の保護観察率の推移
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(3)勾留と保釈

詐欺について,令和2年の通常第一審における被告人の勾留状況を見ると,8-3-1-38表のとおりである。同年における通常第一審全体の勾留率(移送等を含む終局処理人員に占める勾留総人員の比率)は74.0%,保釈率(勾留総人員に占める保釈人員の比率)は30.1%であった(2-3-3-9表CD-ROM参照)。一方,詐欺については,勾留率(86.9%)及び保釈率(32.5%)共に,通常第一審全体を上回った。通常第一審における勾留総人員に占める勾留期間3月を超える者の人員の比率を見ると,全体では24.5%であるのに対し(2-3-3-9表CD-ROM参照),詐欺では42.7%であった。

8-3-1-38表 詐欺 通常第一審における被告人の勾留状況
8-3-1-38表 詐欺 通常第一審における被告人の勾留状況
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(4)家庭裁判所における処理状況

令和2年における詐欺の少年保護事件について,家庭裁判所終局処理人員の処理区分別構成比を見ると,8-3-1-39図のとおりであり,保護観察(38.1%,204人)が最も高く,次いで,審判不開始(24.8%,133人),少年院送致(17.9%,96人)の順であった。児童自立支援施設・児童養護施設送致はなかった。

8-3-1-39図 詐欺 少年保護事件 終局処理人員の処理区分別構成比
8-3-1-39図 詐欺 少年保護事件 終局処理人員の処理区分別構成比
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詐欺について,刑事処分相当を理由に検察官送致された事件の令和2年における検察庁での処理状況は3-3-2-1表を,同年における少年の通常第一審での科刑状況は3-3-2-2表をそれぞれ参照。