国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づき,昭和37年(1962年)に設置された,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を中核とする国連犯罪防止・刑事司法プログラム・ネットワーク機関(PNI:United Nations Crime Prevention and Criminal Justice Programme Network Institutes)の一つであり,法務総合研究所国際連合研修協力部により運営され,刑事司法分野における研修,研究及び調査を実施することにより,世界各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。
UNAFEIでは,毎年,世界中の開発途上国の警察官,検察官,裁判官,矯正職員,保護観察官等を対象として,国際研修(年2回),国際高官セミナー(年1回)及び汚職犯罪対策に特化した「汚職防止刑事司法支援研修」を実施してきた。令和2年度(2020年度)は,新型コロナウイルス感染症の世界的流行により,これらの研修・セミナーは実施されなかったが,令和3年度(2021年度)は,新型コロナウイルス感染症の情勢を踏まえつつ,オンライン会議システムを用いた方法を取り入れて実施する予定である。また,同年度からは,包摂的な社会に向けた再犯者,児童・女性等を含む弱者に対する刑事司法的対処をテーマとした新たな国際研修(年1回)も実施する予定である。
このほか,UNAFEIは,世界各国や国連等の要請を受け,特定の国・地域を対象とする研修や共同研究等を実施しており,現在は,東南アジア諸国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナー及びカンボジア,ネパール,東ティモール,フィリピン,ベトナム等の刑事司法関係機関を対象とした研修・共同研究等を実施している。令和2年度(2020年度)は,新型コロナウイルス感染症の流行により,従来のように相手国との往来を伴う活動を実施することができなかったが,東南アジア諸国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナーのほか,ネパール及びフィリピンに対する研修・共同研究については,オンライン会議システムを用いて実施した。
さらに,UNAFEIは,令和3年度(2021年度)に,日本の大学生や大学院生,海外からの留学生を対象とした新たな取組として,「薬物に関連する犯罪の防止及び薬物からの離脱のための若者の取組について」をテーマとしたユース国際研修をオンライン会議システムを用いて実施した。
UNAFEIの研修に参加した刑事司法関係者(日本人を含む。)は,139の国・地域から,6,100人以上となっている(令和3年(2021年)3月現在)。
また,UNAFEIは,PNIの一員として,毎回コミッション(本章第1節参照)やコングレス(第7編参照)に出席するとともに,他のPNIとも緊密な連携を取りながら,犯罪防止や刑事司法に関する国連の政策の立案・実施に協力し,「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の推進にも努めている。