薬物使用の問題は,我が国だけではなく,世界各国においても重大な問題となっている。7-7-1-1表は,我が国及び諸外国における薬物の生涯経験率及び過去1年経験率(推計値)を見たものである。薬物の生涯経験率及び過去1年経験率とは,一般住民に生涯又は過去1年に薬物を使用した経験の有無を尋ねたアンケート結果から推計される総人口に占める生涯又は過去1年に薬物を使用した者の比率である。なお,国によって薬物の規制状況等に違いがあるほか,調査年,調査対象年齢,調査項目等も異なることに留意する必要があるものの,傾向を大まかに見ると,我が国は諸外国と比べて,薬物を使用した経験のある人の比率が相当に低く,一般人口における薬物汚染の程度が小さいということが指摘できる。
国連薬物・犯罪事務所(UNODC)(第1編第3章第1節及び本章第2節2項(1)イ(ウ)参照)は,世界の薬物問題への理解とその問題への国際協力を促進するために,毎年,世界薬物報告書を発刊している。
この節では,令和2年(2020年)の世界薬物報告書(以下この節において「報告書」という。)から,世界における薬物の使用,生産及び不正取引の状況について紹介する。