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令和2年版 犯罪白書 第7編/第4章/第3節/4

4 保護観察
(1)保護観察開始人員中の有前科者

覚醒剤取締法違反の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,有前科者(今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。以下(1)において同じ。)の保護観察開始人員及び有前科者率(保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。以下(1)において同じ。)の推移(最近10年間)は,7-4-3-12図のとおりである。全体の有前科者率(5-2-4-1図参照)と比べると,一部執行猶予者については大きな差はないが,仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者については,有前科者率は高い傾向にあり,令和元年においては,同法違反は,全体よりも,仮釈放者(全部実刑者)(94.9%)が14.3pt,保護観察付全部執行猶予者(69.7%)が12.0pt,それぞれ高くなっている。

7-4-3-12図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員(前科の有無別)・有前科者率の推移
7-4-3-12図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員(前科の有無別)・有前科者率の推移
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(2)保護観察対象者の再処分等の状況

覚醒剤取締法違反の仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率(第5編第2章第4節2項参照)の推移を,男女別・年齢層別・就労状況別に見ると,7-4-3-13図のとおりである(仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者については,CD-ROM参照)。

男女別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者)は男女の差に顕著な傾向が見られないのに対し,保護観察付全部執行猶予者は男性の方が女性よりも一貫して高かったが,令和元年にはその差はほとんどなくなった。

年齢層別に取消・再処分率を見ると,30歳未満が高い傾向にある。また,30歳未満の取消・再処分率を,全体の取消・再処分率(5-2-4-3図CD-ROM参照)と比較すると,令和元年においては,覚醒剤取締法違反は,全体よりも,仮釈放者(全部実刑者)(3.7%)が0.3pt,仮釈放者(一部執行猶予者)(5.6%)が1.3pt,保護観察付全部執行猶予者(44.4%)が8.7pt,保護観察付一部執行猶予者(85.7%)が19.0pt,それぞれ高くなっている(CD-ROM参照)。

保護観察終了時の就労状況別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部・一部執行猶予者共に,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い。また,全体の取消・再処分率(5-2-4-3図CD-ROM参照)と比べて,有職者の取消・再処分率が高い傾向にあり,令和元年においては,覚醒剤取締法違反は,全体よりも,仮釈放者(全部実刑者)(2.6%)が0.7pt,仮釈放者(一部執行猶予者)(1.5%)が0.1pt,保護観察付全部執行猶予者(25.6%)が6.3pt,保護観察付一部執行猶予者(47.2%)が5.1pt,それぞれ高くなっている(CD-ROM参照)。

7-4-3-13図 覚醒剤取締法違反 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,就労状況別)
7-4-3-13図 覚醒剤取締法違反 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,就労状況別)
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7-4-3-14表は,覚醒剤取締法違反の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察が開始された年(最近10年間)ごとに,保護観察が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員を見たものである。平成29年から令和元年の各年に保護観察が開始された保護観察付全部・一部執行猶予者の取消状況を見ると,各年とも,全体(5-2-4-4表参照)と同様,保護観察付一部執行猶予者の方が保護観察付全部執行猶予者に比べて,元年末までに刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の比率が高い。例えば,平成29年に保護観察が開始された一部執行猶予者(208人)は,令和元年末までに25.5%が刑の執行猶予の言渡しを取り消されており,平成29年に保護観察が開始された保護観察付全部執行猶予者(384人)の21.4%より4.1pt高くなっている。

7-4-3-14表 覚醒剤取締法違反 仮釈放・保護観察付全部・一部執行猶予の取消状況
7-4-3-14表 覚醒剤取締法違反 仮釈放・保護観察付全部・一部執行猶予の取消状況
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