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令和2年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節

第1節 大麻取締法

大麻取締法は,大麻の用途を学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し,大麻の取扱いを免許制とし,免許を有しない者による大麻の取扱いを禁止するとともに,違反行為を規定して罰則を設けた法律である。

戦後,連合国軍総司令部(GHQ)の指令を実施するための国内法として,昭和20年9月に「「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」(昭和20年勅令第542号)が公布・施行され,これに基づいて制定された「麻薬原料植物ノ栽培,麻薬ノ製造,輸入及輸出等禁止ニ関スル件」(昭和20年厚生省令第46号)により大麻についても麻薬としての規制が行われ,大麻草の栽培等が全面的に禁止された。その後,麻薬取締規則(昭和21年厚生省令第25号)によって,大麻草を含む麻薬の製造・輸入・輸出が原則として禁止された。しかしながら,当時我が国においては,大麻草は衣料の原料等に用いられており,この需要に応じるためには大麻草の栽培再開が必要であったことから,繊維及び種子の採取又は研究目的の場合に限り大麻草の栽培を認める内容の大麻取締規則(昭和22年厚生・農林省令第1号)により,麻薬から独立して大麻の規制が行われるようになり,23年,同規則が廃止され,大麻取締法が制定された(昭和23年7月施行)。

大麻取締法の重要な改正としては,昭和28年法律第15号による改正により,大麻の定義が「大麻草及びその製品」と改められ,大麻草の種子は規制の対象外とされたこと(昭和28年4月施行),昭和38年法律第108号による改正により,大麻から製造された医薬品の施用を受けることを禁止する規定の新設及び罰則の法定刑が引き上げられたこと(昭和38年7月施行),平成2年法律第33号による改正により,大麻の栽培・輸出入・譲渡し・譲受け・所持等についての営利犯加重処罰規定及び未遂罪の処罰規定,栽培・輸出入についての予備罪の処罰規定,資金等提供罪,周旋罪等が新設されたこと(平成2年8月施行),平成3年法律第93号による改正により,大麻の定義規定の明確化,資金等提供の処罰範囲の拡大,大麻の運搬の用に供した車両等への没収範囲の拡大,国外犯処罰規定の新設等が行われたこと(平成4年7月施行)などがある。