我が国の刑法犯の認知件数が平成8年以降毎年戦後最多を更新するなど,犯罪情勢が悪化の一途をたどっていたことを踏まえ,15年9月,政府は,犯罪対策閣僚会議を開催した。同会議は,同年12月,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画-「世界一安全な国,日本」の復活を目指して-」を策定し,平穏な暮らしを脅かす身近な犯罪の抑止等を重点課題として掲げ,政府が取り組むべき具体的施策を示した。
その後,刑法犯の認知件数も毎年減少するなど,犯罪情勢には改善の兆しが見られたが,平成19年版犯罪白書の記載にあるとおり,全犯罪者の約30%にとどまる再犯者によって約60%もの犯罪が行われていることが明らかとなり,再犯防止対策の重要性が改めて認識された。
平成20年12月,犯罪対策閣僚会議は,犯罪を更に減少させ,国民の治安に対する不安感を解消するため,犯罪対策の新たな行動計画として,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」を策定し,その中で,「犯罪者を生まない社会の構築」を重点課題として掲げ,刑務所出所者等の再犯防止に取り組むべきことを明らかにした。
平成24年7月,犯罪対策閣僚会議は,より総合的かつ体系的な再犯防止対策を構築する必要があるとして,「再犯防止に向けた総合対策」を策定し,関係諸機関の連携による一層効果的な再犯防止対策の推進を図ることとした。この総合対策においては,特に重要と考えられる課題として,三つの観点を示し,四つの重点施策を掲げるとともに,具体的な数値目標を設定した。
平成25年12月,政府は,犯罪対策閣僚会議が取りまとめた「「世界一安全な日本」創造戦略」を閣議決定した。この創造戦略は,2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催を視野に「犯罪の繰り返しを食い止める再犯防止対策の推進」を戦略の一つとして掲げ,対象者の特性に応じた指導や支援の強化等の再犯防止対策を推進していくことを明らかにした。
平成26年12月,犯罪対策閣僚会議は,「宣言:犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ~」(以下この章において「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」という。)を決定した。この宣言は,犯罪や非行をした者を社会から排除し,孤立させるのではなく,責任ある社会の一員として再び受け入れることが自然にできる社会環境を構築することが不可欠であるとして,刑務所出所者等の再犯防止の鍵となる「仕事」と「居場所」の確保に向けた具体策を示すとともに,2020年(令和2年)までに,「<1>犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍にする」,「<2>帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る者の数を3割以上減少させる」という数値目標を設定した。
さらに,平成28年7月,犯罪対策閣僚会議は,「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策~立ち直りに向けた“息の長い”支援につなげるネットワーク構築~」を決定し,再犯防止対策の更なる推進を図ることとした。