平成29年6月,刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が成立し,同年7月に施行された。同法により,従来の強姦が強制性交等に改められ,被害者の性別を問わなくなり,かつ,性交(姦淫)に加えて肛門性交及び口腔性交をも対象とし,法定刑の下限が引き上げられるとともに,監護者わいせつ・監護者性交等が新設され,18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為や性交等が処罰されることとなり,強姦等の非親告罪化等がなされた。
強制性交等(前記改正前は強姦及び準強姦であり,改正後は強姦,準強姦,準強制性交等及び監護者性交等を含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は,1-1-2-5図のとおりである。認知件数は,平成9年から増加傾向を示し,15年に2,472件を記録した後,減少し続けたが,24・25年にやや増加するとともに,29年から増加し,令和元年は,1,405件(前年比98件(7.5%)増。なお,前記改正によって対象が拡大した点には留意が必要である。)であり,うち女性を被害者とするものは1,355件であった(6-1-3-1表参照)。検挙件数も平成15年に1,569件を記録した後,減少傾向にあったが,29年から増加し,令和元年は1,311件(同121件(10.2%)増)であった。検挙率は,平成10年から低下し,14年に62.3%と戦後最低を記録した後は上昇傾向にあったものの,29・30年と低下したが,令和元年は93.3%(同2.3pt上昇)であった。
このうち,令和元年における監護者性交等の認知件数及び検挙件数は共に87件(検挙率は100.0%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
なお,肛門性交のみ,口腔性交のみ,又は肛門性交及び口腔性交のみを実行行為とする強制性交等について,令和元年に第一審判決があったものとして法務省刑事局に対し各検察庁から報告があった件数は,64件であった(法務省刑事局の資料による。)。
強制わいせつ(前記改正前は準強制わいせつを含み,前記改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつを含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は,1-1-2-6図のとおりである。認知件数は,平成の初期から増加傾向にあったが,平成11年から13年にかけて前年比25.8~38.6%の勢いで増加し続け,15年には昭和41年以降で最多の1万29件を記録した。その後,平成21年まで減少し,22年から25年まで増加傾向にあったが,26年から減少し続け,令和元年は4,900件(前年比440件(8.2%)減。なお,前記改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が,強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点には留意する必要がある。)であった。検挙件数は,平成5年から25年までは3,000件台,26年以降は4,000件台で推移していたが,令和元年は3,999件(同289件(6.7%)減)であった。検挙率は,平成11年に前年比18.9pt,12年に同14.8pt低下し,14年には35.5%と昭和41年以降で最低を記録したが,その後は上昇傾向にあり,令和元年は81.6%(同1.3pt上昇)であった(CD-ROM参照)。
このうち,令和元年における監護者わいせつの認知件数は60件であり,検挙件数は54件,検挙率は90.0%であった(警察庁刑事局の資料による。)。