平成3年,犯罪被害者の遺族により犯罪被害者等の精神的援助の必要性等が指摘されたことや,7年3月に発生した地下鉄サリン事件等の重大事件を契機に,被害者が犯罪による直接的な被害のみならず,精神面・生活面・経済面等において様々な被害を受けていることなどについて国民の認識が深まった。
平成8年2月,警察庁により「被害者対策要綱」が策定され,11年4月には検察庁において全国的に統一された被害者等通知制度が始まった。12年3月に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議が「犯罪被害と当面の犯罪被害者対策について」を公表し,同年5月にはいわゆる犯罪被害者保護二法が成立し,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見陳述や公判記録の閲覧・謄写等の制度が導入された。
平成16年12月,犯罪被害者等基本法が成立し,同法に基づき,17年12月に犯罪被害者等基本計画が策定された。23年3月には第2次犯罪被害者等基本計画が,28年4月には第3次犯罪被害者等基本計画が策定された。各基本計画の下,損害賠償命令制度の創設や犯罪被害給付制度の拡充,被害者特定事項秘匿決定制度,被害者参加制度,少年審判の傍聴制度等の創設,公判記録の閲覧・謄写が認められる範囲の拡大,被害者参加人に対する旅費支給制度の創設等が行われた。さらに,地方公共団体においても,総合的対応窓口の設置や,犯罪被害者等に関する条例の制定等が行われている。
このように,平成期は,犯罪被害者やその遺族等,当事者の意見を反映し,犯罪被害者等のための施策が大きく進展した時代であった(第1編第2章第5節,第6編第2章及び第4編第3章第1節コラム15参照)。