近年,児童虐待(保護者によるその監護する18歳未満の児童に対する虐待の行為。児童虐待防止法2条参照)の事例が深刻化及び複雑化していることなどから,児童虐待防止法の制定とその改正を始めとする関係法令の整備等によって,児童虐待を防止するための制度の充実が図られている(詳細については,第1編第1章第2節6項(1)及び第2章第5節3項参照)。
4-6-1-1図は,児童虐待に係る事件(児童虐待防止法2条の規定する児童虐待により犯罪として検挙された事件をいう。以下この節において同じ。)について,罪名別の検挙件数及び検挙人員総数の推移(資料を入手し得た平成15年以降)を見たものである(罪名別の検挙人員については,CD-ROM参照)。検挙件数及び検挙人員は,20年前後には緩やかな増加傾向が見られていたが,26年から5年連続で大きく増加し,30年は1,380件,1,419人であり,それぞれ15年(212件,242人)の約6.5倍,約5.9倍であった。罪名別では,特に,暴行が顕著に増加している(CD-ROM参照)。
4-6-1-2表は,資料を入手し得た平成15年・30年の児童虐待に係る事件の検挙人員について,罪名別に見るとともに,30年については,これを更に被害者と加害者の関係別に見たものである。15年には殺人が35.1%,傷害致死が10.3%を占め,直接的に生命に関わる事案が比較的多かったが,30年は殺人が3.9%,傷害致死が0.4%とその割合が低下し,代わりに,暴行,強制性交等,強制わいせつといった罪名による検挙人員が大きく増加している。被害者と加害者の関係別に見ると,30年における総数では,父親等の割合(73.9%)が高いが,殺人及び保護責任者遺棄では,母親等の割合がそれぞれ67.9%,65.5%と高かった。また,実親が総数の68.6%を占めている。