仮釈放は,「改悛の状」があり,改善更生が期待できる懲役又は禁錮の受刑者を刑期満了前に仮に釈放し,仮釈放の期間(残刑期間)が満了するまで保護観察に付することにより,再犯を防止し,その改善更生と円滑な社会復帰を促進することを目的とするものであり,その審理は地方更生保護委員会が行う。
仮釈放は,懲役又は禁錮の受刑者について,有期刑については刑期の3分の1,無期刑については10年の法定期間を経過した後,許すことができる。仮釈放を許すかどうかについては,<1>悔悟の情及び改善更生の意欲があるかどうか,<2>再び犯罪をするおそれがないかどうか,<3>保護観察に付することが改善更生のために相当であるかどうかを順に判断し,それらの基準を満たした者について,<4>社会の感情が仮釈放を許すことを是認するかどうかを最終的に確認して判断される。
また,地方更生保護委員会は,保護処分の執行のため少年院に収容されている者について,処遇の最高段階に達し,仮に退院させることが改善更生のために相当であると認めるとき,その他仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるときは,仮退院を許す。
平成19年12月からは,地方更生保護委員会において,被害者等から申出があったときは,仮釈放等審理において,その意見等を聴取している(第6編第2章第1節5項参照)。
仮釈放審理を開始した人員(平成28年以降は一部執行猶予者の人員を含む。)は,7年において1万3,072人であった後,8年から増加し,16年は1万8,665人まで増加したものの,その後は,減少傾向にあり,30年は1万3,053人(前年比8.7%減)であった。このうち一部執行猶予者の人員は1,186人であった(CD-ROM資料3-7参照)。
仮釈放が許可された人員と許可されなかった人員(仮釈放の申出が取り下げられた者を除く。)の合計に占める後者の比率は,平成元年が4.5%,15年は2.6%,30年は4.6%(前年比0.2pt上昇)であったところ,このうち30年の一部執行猶予者について見ると,0.6%であった(CD-ROM資料3-7参照)。
少年院からの仮退院を許可された人員は,平成元年は4,639人であり,14年には5,852人まで増加したものの,その後は減少傾向にあり,30年は2,177人(前年比10.1%減)であった(CD-ROM資料3-7参照)。
出所受刑者(仮釈放,一部執行猶予者の実刑部分刑期終了,又は満期釈放により刑事施設を出所した者に限る。)の人員及び仮釈放率の推移(昭和24年以降)は,3-1-5-1図のとおりである。平成期において,仮釈放者人員は,1万2,000人台から1万6,000人台で,満期釈放者等人員は,8,000人台から1万5,000人台で推移している。平成29年から出所受刑者の人員に一部執行猶予者を含み,30年の仮釈放者1万2,299人には,一部執行猶予者で仮釈放となった992人が含まれており,また,同年の満期釈放者等人員は,満期釈放者8,523人と一部執行猶予者で実刑部分刑期終了により出所した210人を合わせた8,733人であった(CD-ROM参照)。
平成期の仮釈放率は,平成元年の56.3%から緩やかに上昇し,9年に58.3%となった。10年から低下し,12年に55.9%となったものの,13年から56%台で推移し,16年は56.5%であった。しかしながら,17年から6年連続で低下し,21年に50%を割り,22年に49.1%と最低となったが,23年に上昇に転じて再び50%を超え,30年は平成期で最も高い58.5%(前年比0.5pt上昇)であった。これを男女別に見ると,平成期では,男性が47.5%から57.3%の間で,女性は,69.1%から84.7%の間で推移している。30年は男性が57.0%(同0.7pt上昇),女性が72.0%(同0.9pt低下)であった(CD-ROM参照。なお,年齢層別の仮釈放率の推移(総数・女性別)については,4-8-2-8図参照)。
3-1-5-2図は,定期刑受刑者の仮釈放許可人員について,刑の執行率(執行すべき刑期に対する出所までの執行期間の比率)の区分別構成比の推移(平成元年・15年・26年~30年)を見るとともに,30年の同人員の刑の執行率を刑期別に見たものである。刑の執行率が70%未満で仮釈放された人員の構成比は,元年が15.6%,15年が11.4%であったが,ここ数年は低く,30年は1.4%であった。また,同年においては,刑期が1年を超える者では,刑期が長い者の方が,刑の執行率が低い段階で仮釈放が許される者の占める比率が低くなっている。
3-1-5-3表は,無期刑の仮釈放許可人員の推移(平成元年以降)を刑の執行期間別に見たものである。元年は,執行期間が20年以内の者が13人中9人であったが,15年は,13人全ての者が20年を超え,30年は,10人全ての者が30年を超えている。
受刑者の帰住予定地を管轄する保護観察所では,刑事施設から受刑者の身上調査書の送付を受けるなどした後,保護観察官又は保護司が引受人等と面接するなどして,帰住予定地の状況を確かめ,住居,就労先等の生活環境を整えて改善更生に適した環境作りを働き掛ける生活環境の調整を実施している。この結果は,仮釈放審理における資料となるほか,受刑者の社会復帰の基礎となる。
刑の一部執行猶予制度の導入に伴う更生保護法の一部改正により,平成28年6月1日から,保護観察所が行う生活環境の調整について,地方更生保護委員会が指導・助言・連絡調整を行うこと,受刑者に対する調査を行うことが可能となり,調整機能の充実化が図られた。また,保護観察付一部執行猶予者について,猶予期間に先立って仮釈放がない場合,実刑部分の執行から猶予期間中の保護観察へ円滑に移行できるよう,地方更生保護委員会が,生活環境の調整の結果を踏まえて審理し(住居特定審理),その者が居住すべき住居を釈放前に特定することができるようになった。30年に住居特定審理を経て住居が特定された者は169人(前年比79人増)であった(保護統計年報による。)。
生活環境の調整を開始した人員は,平成元年が3万6,375人,15年が5万2,240人であり,30年は3万8,510人であった。うち受刑者の人員は,元年が3万830人,15年が4万5,399人であり,30年は3万5,380人(前年比6.6%減)であった。このうち保護観察付一部執行猶予者の人員は2,978人であった(保護統計年報による。)。
平成21年4月から,高齢者又は障害を有する者で,かつ,適当な帰住先がない受刑者等について,釈放後速やかに,必要な介護,医療,年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として,特別調整(本章第4節3項(5)参照)を実施している。具体的には,福祉サービス等を受ける必要があると認められること,その者が支援を希望していることなどの特別調整の要件を全て満たす矯正施設の被収容者を矯正施設及び保護観察所が選定し,各都道府県が設置する地域生活定着支援センター(厚生労働省の地域生活定着促進事業により設置)に依頼して,適当な帰住先の確保を含め,出所後の福祉サービス等について特別に調整を行っている。特別調整の終結人員(少年を含む。)の推移(統計の存在する23年度以降)は,3-1-5-4図のとおりである。特別調整の終結人員は,24年度から増加傾向にあったが,30年度は減少し,698人であった(法務省保護局の資料による。)。