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令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/3

3 受刑者の処遇等
(1)処遇の概要

受刑者の処遇は,刑事収容施設法に基づき,受刑者の人権を尊重しつつ,その者の資質及び環境に応じ,その自覚に訴え,改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを目的として行う。その流れについて,刑事収容施設法施行前後を比較すると,3-1-4-12図のとおりである。

3-1-4-12図 受刑者処遇の流れ
3-1-4-12図 受刑者処遇の流れ
ア 処遇指標及び処遇要領

受刑者の処遇の中核となるのは,矯正処遇として行う作業(本項(2)参照),改善指導及び教科指導(本項(3)参照)である。矯正処遇は,個々の受刑者の資質及び環境に応じて適切な内容と方法で実施しなければならない(個別処遇の原則)。

そのため,各刑事施設では,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識及び技術を活用し,受刑者の資質及び環境の調査(処遇調査)を行っている。また,新たに刑が確定した受刑者で,26歳未満の者及び特別改善指導(本項(3)イ参照)の受講に当たり特に調査を必要とする者等には,調査センターとして指定されている特定の刑事施設で精密な処遇調査が行われている。平成29年11月からは,受刑者の再犯の可能性等を客観的,定量的に把握するために開発を進めている受刑者用一般リスクアセスメントツール(Gツール)のうち,一部機能の運用を開始している。原則として,全受刑者を対象に,刑の執行開始時に行う処遇調査においてGツールを実施し,それによって得られる結果や情報を処遇決定の参考としている。

刑事施設では,刑の執行開始時に処遇調査(調査センターでの処遇調査を含む。)を行い,その調査結果を踏まえ,受刑者に処遇指標を指定する。処遇指標は,矯正処遇の種類・内容,受刑者の属性及び犯罪傾向の進度から構成される。処遇指標の区分及び平成30年末現在の符号別の人員は3-1-4-13表のとおりである。処遇指標は,その指定がなされるべきものは,重複して指定され,処遇指標を指定されることで,受刑者の収容される刑事施設と矯正処遇の重点方針が定まる。刑事収容施設法が施行される前は,処遇指標ではなく,収容分類級(収容すべき施設又は施設内の区画を区別する基準となる分類級をいう。以下同じ。)及び処遇分類級(処遇の重点方針を区別する基準となる分類級をいう。以下同じ。)によっており,15年末現在の受刑者の収容分類級別人員は3-1-4-14表,同じく受刑者の処遇分類級別人員は3-1-4-15表のとおりである。

3-1-4-13表 処遇指標の区分・符号別人員
3-1-4-13表 処遇指標の区分・符号別人員
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3-1-4-14表 収容分類級別人員
3-1-4-14表 収容分類級別人員
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3-1-4-15表 処遇分類級別人員
3-1-4-15表 処遇分類級別人員
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受刑者には,刑の執行開始時の処遇調査の結果に基づいて,矯正処遇の目標並びにその基本的な内容及び方法(例えば,具体的にどのような方法や期間・回数で薬物依存離脱指導を行うかなど)が処遇要領として定められ,矯正処遇はこの処遇要領に沿って計画的に実施される。

また,矯正処遇の進展に応じて,定期的に又は臨時に処遇調査を行い,その結果に基づき,必要に応じ処遇指標及び処遇要領を変更する。

イ 制限の緩和と優遇措置

刑事収容施設法が施行される前は,累進処遇制度(刑の執行の過程に四つの段階(第1級ないし第4級)を設け,受刑者の行刑成績によって入所当初の最下級(第4級)から,順次上級に進級させ,それとともに漸進的に外部交通等に関する優遇と責任の付与を行うもの)が採られていたが,同制度は同法施行により廃止され,代わりに導入されたのが制限の緩和と優遇措置の制度である。

受刑者の自発性や自律性を涵(かん)養するため,受刑者処遇の目的(改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成)を達成する見込みが高まるに従い,順次,規律・秩序維持のための制限を緩和することとし,その制限が緩和された順に第1種から第4種までの区分を指定し,定期的に,及び随時,上記の見込みを評価し,その評価に応じて,制限区分の指定を変更している。各区分に指定された受刑者の制限の内容は,第4種では,原則として居室棟内で矯正処遇等を行うこと,第3種では,主として刑事施設内の居室棟外(工場等)で矯正処遇等を行うこと,第2種では,刑事施設外での矯正処遇等が可能となること,第1種では,居室に施錠をしないことなどである。平成31年4月10日現在,刑事施設本所75庁並びに刑務支所8庁及び大規模拘置支所4庁(札幌,横浜,さいたま及び小倉)合計87庁の施設における受刑者の制限区分別人員は,第1種386人(0.9%),第2種6,344人(14.6%),第3種3万2,095人(74.0%),第4種903人(2.1%),指定なし3,639人(8.4%)であった(法務省矯正局の資料による。)。

また,受刑者に改善更生の意欲を持たせるため,刑事施設では,6か月ごとに受刑態度を評価し,良好な順に第1類から第5類までの優遇区分に指定し,良好な区分に指定された受刑者には,外部交通の回数を増やしたり,自弁(自費購入又は差入れを受けること。以下この章において同じ。)で使用できる物品の範囲を広げたりするなどの優遇をした処遇を行っている。平成31年4月10日現在,前記87庁の施設における受刑者の優遇区分別人員は,第1類852人(2.0%),第2類6,767人(15.6%),第3類1万8,450人(42.5%),第4類3,753人(8.7%),第5類4,025人(9.3%),指定なし9,520人(22.0%)であった(法務省矯正局の資料による。)。

なお,受刑者の自発性や自律性を涵(かん)養し,社会適応性を向上させ,その改善更生及び円滑な社会復帰を目指すため,開放的施設として4施設(網走刑務所二見ヶ岡農場,市原刑務所,松山刑務所大井造船作業場及び広島刑務所尾道刑務支所有井作業場)が指定されている。これらの施設では,受刑者に対する強い信頼を前提として,一般社会の生活にできる限り近似させた処遇が行われている。開放的施設における処遇は,交通事犯禁錮受刑者が急増した昭和30年代半ばから,これら受刑者に対する特別な処遇方法として本格的に実施されるようになり,平成初期には,喜連川刑務支所における農業土木の職業訓練のほか,構外作業の形態等により山形刑務所最上農場,函館少年刑務所鱒川農場,松山刑務所大井造船作業場等において行われていた。

ウ 外出・外泊

受刑者は,受刑者処遇の目的を達成する見込みが高く,開放的施設で処遇を受けているなど,一定の要件を備えている場合において,円滑な社会復帰を図る上で,釈放後の住居又は就業先の確保,家族関係の維持・調整等のために外部の者を訪問し,あるいは保護司その他の更生保護関係者を訪問するなどの必要があるときに,刑事施設の職員の同行なしに,刑事施設から外出し,又は7日以内の期間で外泊することを許されることがある。刑事収容施設法施行により新たに導入された制度であるところ,同法施行後から平成30年末までの実績は,外出408件,外泊26件であった(法務省矯正局の資料による。)。

(2)作業
ア 概況

懲役受刑者には,法律上,作業が義務付けられている(労役場留置者も同様である。)。このほか,禁錮受刑者及び拘留受刑者も希望により作業を行うことができる。平成30年度における作業の一日平均就業人員は,4万3,737人であった。また,禁錮受刑者は,31年3月31日現在で,81.4%が作業に従事していた(法務省矯正局の資料による。)。

刑務作業の実施に関しては,昭和58年から財団法人(現在は公益財団法人)矯正協会刑務作業協力事業部(以下「事業部」という。)により,刑務作業の実施に必要な原材料が調達・提供されている。これは,厳しい国の財政事情に対応するため国の予算である原材料費を削減し,その代替措置として国から一定の補助金を同協会に交付し,事業部が刑務作業の実施に必要な原材料を提供して,国が製品を製作するものであり,平成期においても作業量の確保に貢献している。刑務所作業製品(CAPIC製品)は,毎年6月初旬頃,東京で開催される全国矯正展を始め,各地の矯正展等で展示・販売されている。

イ 作業の内容等

受刑者は,作業として職業訓練を受けることがあるほか,生産作業(物品を製作する作業及び労務を提供する作業で,木工,印刷,洋裁,金属等の業種がある。),社会貢献作業(労務を提供する作業であって,公園等の除草作業等社会に貢献していることを受刑者が実感することにより,その改善更生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認める作業。平成23年6月から導入された。),自営作業(刑事施設における炊事,清掃,介助,矯正施設の建物の修繕等の作業)の中から,受刑者の希望も参酌し,適性に応じて指定される。社会貢献作業を実施した施設数及び対象受刑者数について,23年度は3庁510人,30年度は27庁(刑務支所を含む。)326人であった(法務省矯正局の資料による。)。

作業は,刑事施設内で行うものが大部分であるが,刑事施設が管理する構外作業場で行うものもあり,さらに,刑事施設の外の事業所の協力を得て,受刑者を職員の同行なしに,その事業所に通勤させて業務に従事させる(職業訓練を受けさせることを含む。)こともある(外部通勤作業)。同作業は,刑事収容施設法の施行により新設された制度であるところ,外部通勤作業を実施しているのは,平成25年3月末日現在は,5庁12人であったが,31年3月末日現在は,6庁20人であった(法務省矯正局の資料による。)。なお,前記の外出,外泊及び外部通勤作業の運用に当たっては,GPS機器が活用されている。

作業の収入は,全て国庫に帰属する。平成30年度における作業による歳入額は,約38億円であった(法務省矯正局の資料による。)。

他方,受刑者には,従事した作業に応じ,作業報奨金が原則として釈放時に支給される。作業報奨金に充てられる金額(予算額)は,平成30年度には,一人1か月当たり平均で4,360円であった(法務省矯正局の資料による。)。また,30年の出所受刑者が出所時に支給された作業報奨金の金額を見ると,5万円を超える者が37.0%,1万円以下の者が13.7%であった(矯正統計年報による。)。刑事収容施設法が施行される前は,作業に従事した受刑者に対して,作業賞与金が原則として釈放時に支給されていたところ,作業賞与金に充てられる金額(予算額)は,元年度には,一人1か月当たり3,132円であった(法務省矯正局の資料による。)。

ウ 職業訓練

刑事施設では,受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ,又は職業上有用な知識や技能を習得させるために,職業訓練を実施している。職業訓練には,総合訓練,集合訓練及び自庁訓練の三つの方法がある。総合訓練は全国の刑事施設から,集合訓練は主に各矯正管区単位で,自庁訓練は刑事施設ごとに,それぞれ適格者を選定して実施している。男性受刑者に対する総合訓練は,同施設として指定された7庁(山形,福井,山口及び松山の各刑務所並びに函館,川越及び佐賀の各少年刑務所)で実施している。女性受刑者に対する職業訓練は,各女性施設で実施している一部の職業訓練種目について,他の女性施設からも希望者を募集して実施している。

刑事施設では,平成30年度には,建設機械科,自動車整備科,フォークリフト運転科,ビジネススキル科等の合計47種目の職業訓練が実施され,1万3,040人がこれを修了し,溶接技能者,ボイラー技士,情報処理技術者等の資格又は免許を取得した者(以下この項において「資格・免許取得者数」という。)は,総数で7,583人であった。なお,資格・免許取得者数について,10年度は,総数で2,048人,20年度は,総数で4,342人であった(法務省矯正局の資料による。)。

平成30年3月からは,出所後の就労先への定着を図り,再犯防止につなげていくことを目的として,在所中に内定を受けた者等を対象に,内定を受けた事業所等において一定期間就労を体験させる職場体験制度が,職業訓練の一環として位置付けられた上で導入されている。30年度末までに職場体験を経験した受刑者数は,32人であった(法務省矯正局の資料による。)。

(3)矯正指導

改善指導,教科指導並びに刑執行開始時及び釈放前の指導の四つを総称して矯正指導という。

ア 刑執行開始時の指導

受刑者には,入所直後,原則として2週間の期間で,受刑等の意義や心構え,矯正処遇を受ける上で前提となる事項(処遇制度,作業上の留意事項,改善指導等の趣旨・概要等),刑事施設における生活上の心得,起居動作の方法等について指導が行われる。

イ 改善指導

改善指導は,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行うもので,一般改善指導及び特別改善指導がある。

一般改善指導は,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の方法により,<1>被害者及びその遺族等の感情を理解させ,罪の意識を培わせること,<2>規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し,心身の健康の増進を図ること,<3>生活設計や社会復帰への心構えを持たせ,社会適応に必要なスキルを身に付けさせることなどを目的として行う。平成29年度からは,高齢又は障害を有する受刑者のうち,福祉的支援を必要とする者又は受講させることにより改善更生及び円滑な社会復帰に資すると見込まれる者を対象に,比較的早期の段階から,出所後の円滑な社会生活を見据えた指導を実施することを目的とした「社会復帰支援指導の標準プログラム」が策定され,全国的に展開されている(一部の刑事施設においては,26年度から試行的に実施)。

特別改善指導は,薬物依存があったり,暴力団員であるなどの事情により,改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するよう特に配慮して行う。現在,<1>「薬物依存離脱指導」(薬物使用に係る自己の問題性を理解させた上で,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせるなど。平成30年度の実施施設数は75庁),<2>「暴力団離脱指導」(警察等と協力しながら,暴力団の反社会性を認識させる指導を行い,離脱意志の醸成を図るなど。同34庁),<3>「性犯罪再犯防止指導」(性犯罪につながる認知の偏り,自己統制力の不足等の自己の問題性を認識させ,その改善を図るとともに,再犯に至らないための具体的な方法を習得させるなど。性犯罪者調査,各種プログラムの実施,メンテナンスの順に行われる。同21庁),<4>「被害者の視点を取り入れた教育」(罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるなどし,被害者等に誠意をもって対応するための方法を考えさせるなど。同60庁),<5>「交通安全指導」(運転者の責任と義務を自覚させ,罪の重さを認識させるなど。同52庁)及び<6>「就労支援指導」(就労に必要な基本的スキルとマナーを習得させ,出所後の就労に向けての取組を具体化させるなど。同65庁)の6類型の特別改善指導を実施している。特別改善指導の受講開始人員の推移(18年度以降)は,3-1-4-16図のとおりである。薬物依存離脱指導については,28年度から,標準プログラムを複線化し,必修プログラム(麻薬,覚せい剤その他の薬物に対する依存があると認められる者全員に対して実施するもの)や専門プログラム(より専門的・体系的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して実施するもの),選択プログラム(必修プログラム又は専門プログラムに加えて補完的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して実施するもの)を整備した。同年度以降,受講開始人員は1万人前後で推移している。

3-1-4-16図 特別改善指導の受講開始人員の推移
3-1-4-16図 特別改善指導の受講開始人員の推移
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なお,刑事収容施設法が施行される前は,生活指導の中で,処遇類型別指導が行われていた。同指導は,受刑罪名又は犯罪に至る原因となった性行その他の円滑な社会復帰の障害となり得る要因に着目し,同じ類型に属する者を小集団として編成し,その社会適応上の問題点の改善に焦点を当て,指導することをいい,講話,集団討議,グループカウンセリング等によって,覚せい剤乱用防止教育,酒害教育,暴力団離脱指導,交通事犯防止指導等が実施されていた。

ウ 教科指導

教科指導とは,学校教育の内容に準ずる指導である。社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対して行う教科指導(補習教科指導)のほか,学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる受刑者に対しても,その学力に応じた教科指導(特別教科指導)を行っている。刑事収容施設法が施行される前にも,教科教育として国語,数学,社会その他の必要な科目の履修又は補習が行われるなどしていた。

平成19年度から,法務省と文部科学省の連携により,刑事施設内において,高等学校卒業程度認定試験を実施し,また,現在,指定された4庁の刑事施設において,同試験の受験に向けた指導を積極的かつ計画的に実施している。30年度の受験者数は484人,合格者数は,高卒認定試験合格者が196人,一部科目合格者が251人であった。なお,20年度の受験者数は242人,合格者数は,高卒認定試験合格者が86人,一部科目合格者が152人であった(文部科学省総合教育政策局(20年度は,文部科学省生涯学習政策局)の資料による。)。

松本少年刑務所内には,我が国において唯一,公立中学校の分校が刑事施設内に設置(昭和30年開設)されており,全国の刑事施設に収容されている義務教育未修了者等のうち希望者を中学3年生に編入し,地元中学校教諭,職員等が,文部科学省の定める学習指導要領を踏まえた指導を行っている。さらに,盛岡少年刑務所及び松本少年刑務所では近隣の高等学校の協力の下,当該高等学校の通信制課程に受刑者を編入させ,指導を行う取組を実施し,そのうち松本少年刑務所は全国の刑事施設から希望者を募集し,高等学校教育を実施しており,所定の課程を修了したと認められた者には,高等学校の卒業証書が授与される。なお,高等学校通信制課程の受講は,平成初期には既に行われていた。

エ 釈放前の指導

受刑者には,釈放前に,原則として2週間の期間で,釈放後の社会生活において直ちに必要となる知識の付与や指導が行われる。

(4)就労支援

平成18年度から,法務省は,受刑者等の出所時の就労の確保に向けて,刑事施設及び少年院に就労支援スタッフを配置するとともに,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施している。この施策は,刑事施設,少年院,保護観察所及びハローワークが連携する仕組みを構築した上で,支援対象者の希望や適性等に応じ,計画的に就労支援を行うものであるが,その一環として,刑事施設では,支援対象者に対し,ハローワークの職員による職業相談,職業紹介,職業講話等を実施している(保護観察所における就労支援については,本章第5節3項(2)エ参照)。

また,平成25年2月に,日本財団及び関西の企業7社が,少年院出院者や刑務所出所者の更生と社会復帰を目指す「職親プロジェクト」を発足させた。同プロジェクトは,少年院出院者や刑務所出所者に就労と教育の機会を提供することで,円滑な社会復帰を支援するとともに,再犯者率の低下の実現を目指しており,令和元年5月末現在で,130社が参加している(日本財団の資料による。)。

平成26年2月からは,刑務所出所者等の採用を希望する事業者が,矯正施設を指定した上でハローワークに求人票を提出することができる「受刑者等専用求人」の運用が開始され,事業者と就職を希望する受刑者とのマッチングの促進に努めている。

さらに,受刑者等の就労先を在所中に確保し,出所後速やかに就労に結び付けるため,平成28年11月から,東京矯正管区及び大阪矯正管区にそれぞれ設置された矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」)が,受刑者等の帰住地や取得資格等の情報を一括管理し,出所者等の雇用を希望する企業の相談に対応して,企業のニーズに適合する者を収容する施設の情報を提供する(雇用情報提供サービス)などして,広域的な就労支援等に取り組んでいる。30年度からは,刑務所出所者等の雇用経験が豊富な事業主等を刑務所出所者等雇用支援アドバイザーとして招へいし,刑務所出所者等の雇用前後における事業主の不安や疑問等の相談に応じられる体制を整備するとともに,同アドバイザーによる事業主への相談会を実施(同年度は35回実施し,延べ104人参加)したほか,事業主等に対する就労支援セミナーの開催(同年度は14回開催し,延べ315人参加),相談者が通話料を負担することなく相談に応じられる無料通話回線の整備等を行った。

(5)福祉的支援

平成21年4月から,法務省は,厚生労働省と連携して,高齢又は障害を有し,かつ,適当な帰住先がない受刑者及び少年院在院者について,釈放後速やかに,適切な介護,医療,年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として,矯正施設と保護観察所において特別調整を実施している(概要については,本章第5節2項(2)参照)。この取組では,福祉関係機関等との効果的な連携が求められるところ,その中心となるのは,厚生労働省の地域生活定着促進事業により整備が進められた地域生活定着支援センターであり,この取組によって司法と福祉との多機関連携による支援が行われている。

刑事施設においては,特別調整を始めとする福祉的支援を必要とする者の増加に対応するため,社会福祉士又は精神保健福祉士(以下「社会福祉士等」という。)の資格を有する非常勤職員を配置(社会福祉士は平成19年度から,精神保健福祉士は16年度から配置)してきたほか,26年度からは福祉専門官(社会福祉士等の資格を有する常勤職員)を配置している。社会福祉士等の配置施設数の推移(16年度以降)は,3-1-4-17表のとおりである。21年度に,社会福祉士の配置が大きく増加した。また,27年度以降,福祉専門官の増配置が進められており,31年度は,刑事施設56庁(支所を含む。)に配置されている。

3-1-4-17表 刑事施設における社会福祉士等の配置施設数の推移
3-1-4-17表 刑事施設における社会福祉士等の配置施設数の推移
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さらに,刑事施設においては,認知能力や身体機能の低下した高齢受刑者等に対し,必要に応じて,刑務官や看護師等が食事・入浴等の日常生活の介助を行ってきたところ,このような対応が刑務官等の業務負担を増加させる要因となっているほか,専門的な知識・経験を有する者が介助を行う方が適当であることを考慮し,平成23年度から介護福祉士を,29年度から介護専門スタッフ(介護職員実務者研修又は介護職員初任者研修の修了者等)を配置している。31年度の配置施設数は,介護福祉士が8庁,介護専門スタッフが32庁であった。

また,女性の受刑者を収容する刑事施設における医療・福祉等の問題に対処するため,これらの施設が所在する地域の医療・福祉等の各種団体の協力を得て,平成26年4月から,「女子施設地域連携事業」(28年度までの名称は,女子施設地域支援モデル事業)を行っている(第4編第7章第2節2項(1)イ参照)。

(6)受刑者の釈放等に関する情報の提供

法務省は,警察において,犯罪の防止や犯罪が生じた場合の対応を迅速に行うことができるようにするための協力として,次のとおり,警察庁に対し,重大事犯者を中心に一定の罪を犯した受刑者に関する情報を提供している。

平成17年6月から,刑事施設の長は,警察庁に対し,13歳未満の者に対する強制わいせつ,強制性交等(強姦),わいせつ目的略取誘拐,強盗・強制性交等(強盗強姦)等に係る受刑者について,釈放予定日のおおむね1か月前に,釈放予定日,入所日,帰住予定地等の情報を提供している。令和元年5月31日までに情報提供した対象者数は,2,026人であった(法務省矯正局の資料による。)。

これに加え,平成17年9月から,法務省は,警察庁に対し,殺人,強盗等の重大な犯罪やこれらの犯罪に結び付きやすいと考えられる侵入窃盗,薬物犯罪等に係る受刑者について,毎月,釈放(予定)日,入所日,出所事由等の情報を提供している。令和元年5月31日までに情報提供した対象者数は,延べ約34万1,000人であった(法務省矯正局の資料による。)。