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平成29年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/4

4 その他の指導・支援

矯正施設や保護観察所では,これまで紹介した民間協力者のほかにも,様々な領域の専門家に支えられて被収容者や保護観察対象者の立ち直りに向けた指導・支援を行っている。

(1)女性被収容者の処遇における民間協力者との連携

女性の受刑者の収容施設として指定されている刑事施設(医療刑務所及び拘置所を除く。以下この項において「女子刑事施設」という。)は,刑事施設全庁と比べて収容率が高く(2-4-1-2図4-7-2-3図参照),女性入所受刑者に占める高齢者の割合も男性入所受刑者と比べて高い(2-4-1-5図参照)。また,摂食障害のある者や被虐待経験を有する者等,心身に様々な問題を抱えた受刑者も収容している。一方,女子刑事施設で勤務する女性職員の約半数が20歳代以下の経験の浅い若年職員であることなどにより,受刑者の処遇に苦慮している。

こうした状況を背景に,平成25年2月に立ち上げられた「女子刑務所のあり方研究委員会」の提言を踏まえ,26年4月から女子施設地域連携事業(28年度までの名称は,女子施設地域支援モデル事業)が実施されている。この事業は,地方公共団体,看護協会,助産師会,社会福祉協議会等の協力の下,女子刑事施設が所在する地域の医療,福祉,介護等の専門家とネットワークを作り,専門家の助言・指導を得て,女性受刑者特有の問題に着目した処遇の充実等を図るものである。保健師,助産師,看護師,歯科衛生士,薬剤師,社会福祉士,介護福祉士,精神保健福祉士,作業療法士,臨床心理士等の専門家を非常勤職員として採用するなどし,女性特有の心身の変化等を踏まえた健康管理,妊娠・出産・育児,老齢に伴う心身の変化や疾患,摂食障害等の精神的な問題,過去の被害体験等による心的外傷,アルコール等への依存といった様々な問題について,指導・助言等を行っている。そのほか,これらの専門家が,地域の医療,福祉,介護等の団体との連絡調整を行ったり,職員研修等を実施して職員の育成にも取り組んでいる。

なお,同事業の実施施設は,平成26年度は栃木刑務所,和歌山刑務所及び麓刑務所の3庁であったが,27年度から札幌刑務支所,笠松刑務所,加古川刑務所及び岩国刑務所が,28年度から福島刑務支所及び西条刑務支所が新たに加わり,9庁になった。

(2)特定の問題性や事情に応じた指導・支援における民間協力者との連携

矯正施設や保護観察所では,個々の対象者の有する事情に応じた指導・支援を実施しており,その指導・支援の効果を上げるため,従来,外部の専門家や民間団体と連携し,協力を得てきた。刑事施設における改善指導第2編第4章第2節3項(2)参照),少年院における特定生活指導第3編第2章第4節2項(2)ア参照),保護観察所における専門的処遇プログラム第2編第5章第2節2項(2)ウ参照)等において,大学教員,精神科医,臨床心理士,自助団体等の様々な民間協力者の専門的な知見に基づく支援を得て,個々の対象者の有する事情に応じた働き掛けを実施しており,例えば,アルコールの問題を有する者に対する指導は,刑事施設においても保護観察所においても,必要に応じてアルコール依存からの回復を目的とする民間の自助団体等の協力を得て実施している。また,少年院では,被害者の心情を理解させるとともに,自らの責任を自覚し,慰謝の気持ち等を深めさせることを内容とした被害者心情理解指導の一環として,被害者や被害者家族のほか,被害者と直接接する相談員や被害者支援団体の関係者をゲストスピーカーとして招いて,講話等を実施している。

なお,個々の対象者に対する指導に関して直接参画してもらうだけでなく,矯正施設や保護観察所の職員の指導方法や専門的スキルの向上等のため,民間協力者による職員研修等も継続的に実施している。