少年院における在院者の処遇に関しては,平成26年6月に制定された少年院法に基づいて行われている。
少年院には,次の<1>から<4>までの種類があり,それぞれ,入院時の少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の状況等に応じて,以下の者を収容している。
<1> 第1種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(<2>に定める者を除く。)
<2> 第2種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ,おおむね16歳以上23歳未満のもの
<3> 第3種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの
<4> 第4種 少年院において刑の執行を受ける者
なお,現在,専門的に医療を行う少年院(第3種)として,関東医療少年院及び京都医療少年院が設置されている。
少年院においては,在院者の特性に応じて計画的・体系的・組織的な矯正教育を実施するため,矯正教育課程が定められている。矯正教育課程は,在院者の年齢,心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度,在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに,矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものである。
少年院の種類は,家庭裁判所が少年院送致決定に際し指定する。少年鑑別所の長は,各少年院に指定された矯正教育課程を考慮して,収容する少年院を指定する。少年院の長は,家庭裁判所及び少年鑑別所の意見を踏まえ,在院者の矯正教育課程を指定する。なお,家庭裁判所が,少年院送致決定に際し,第1種少年院を指定する場合において,矯正教育の期間として短期間が適当であると認め,その旨の勧告を行ったときには,少年院は短期義務教育課程又は短期社会適応課程を指定するものとしている。
少年院の種類ごとに指定された矯正教育課程は,3-2-4-9表のとおりであり,平成28年における少年院入院者の矯正教育課程別人員は,同表の人員欄のとおりである。
少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり,在院者には,生活指導,職業指導,教科指導,体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって指導が行われる。少年院の長は,個々の在院者の特性に応じて行うべき矯正教育の目標,内容,方法,期間等を定めた個人別矯正教育計画を作成し,矯正教育はこれに基づき実施される。
少年院における処遇の段階は,その者の改善更生の状況に応じた矯正教育その他の処遇を行うため,1級,2級及び3級に区分されており,在院者は,まず3級に編入され,その後,改善更生の状況等に応じて,上位の段階に移行し,これに応じて,その在院者にふさわしい処遇が行われる。
前記の五つの分野における指導の主な内容は,以下のとおりである。
生活指導では,<1>基本的生活訓練,<2>問題行動指導,<3>治療的指導,<4>被害者心情理解指導,<5>保護関係調整指導及び<6>進路指導について,全体講義,面接指導,作文指導,日記指導,グループワーク等の方法を用いて,教育が行われている。
また,個々の在院者の問題性又は事情に応じ,特定生活指導として,<1>被害者の視点を取り入れた教育,<2>薬物非行防止指導,<3>性非行防止指導,<4>暴力防止指導,<5>家族関係指導及び<6>交友関係指導が行われている。それぞれの指導は,グループワーク,集団指導又は個別指導の形式で行われている。
このうち,薬物非行防止指導及び性非行防止指導については,重点指導施設を指定し,指導の充実を図っている。平成28年度は,薬物非行防止指導では11庁,性非行防止指導では2庁が重点指導施設に指定されており,これらの施設では,他の少年院からも対象者を受け入れるなどして,グループワークによる重点的かつ集中的な指導が実施されている。
職業指導においては,<1>就業に必要な専門的知識及び技能の習得を目的とした「職業能力開発指導」,<2>職業生活における自立を図るための知識及び技能の習得並びに情緒の安定を目的とした「自立援助的職業指導」に加えて,<3>有為な職業人としての一般的な知識及び態度並びに職業選択能力及び職場適応能力の習得を目的とした「職業生活設計指導」が実施されている。現在,職業能力開発指導において実施している種目は,電気工事科,自動車整備科,給排水設備科,情報処理科,介護福祉科,溶接科,土木・建築科及びクリーニング科である。
平成28年における出院者(退院又は仮退院により少年院を出院した者に限る。以下この節において同じ。)のうち,在院中に,個別に指定された職業指導の種目に関連して資格・免許を取得した者は45.9%,それ以外で資格・免許を取得した者は50.5%であり,それぞれの取得者の資格・免許種目別構成比は,3-2-4-10図のとおりである(矯正統計年報による。)。
少年院では,義務教育未終了者及び社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては,小学校又は中学校の学習指導要領に準拠した教科指導を行う。そのほか,高等学校への編入若しくは復学,大学等への進学又は就労等のために高度な学力を身に付けることが必要な者に対しては,その学力に応じた教科指導を行うことができる。平成28年における出院者のうち,中学校又は高等学校への復学が決定した者は,それぞれ78人,98人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,168人であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。なお,19年度から,法務省と文部科学省の連携により,少年院内において,高等学校卒業程度認定試験を実施しており,28年度の受験者数は548人,合格者数は,高卒認定合格者が178人,一部科目合格者が348人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。
善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培わせるため必要な体育指導が行われている。体育指導においては,各種スポーツ種目等を通じて,日常生活に必要な体力や技能を高めることのみならず,遵法の精神や協調性を育むような指導に留意している。
在院者の情操を豊かにし,自主,自律及び協同の精神を養うため,自主的活動,クラブ活動,情操的活動,行事,社会貢献活動といった特別活動指導が行われている。
このうち,自主的活動としては,在院者に日直,図書係,整備係,レクリエーション係等の役割を担当させ(役割活動),自主性,協調性等を養わせているほか,集会,ホームルーム,機関誌の作成等も行われている。社会貢献活動としては,福祉施設でのボランティア活動や近隣の公園・公共施設等の清掃・美化活動等を実施している施設が多い。
在院者の改善更生を図る上で,保護者の果たす役割は大きく,少年院においては,矯正教育に関する情報の提供や講習会等を実施して保護者の協力を得るようにしているほか,在院者の非行に関わる問題等に適切に対処できるよう指導・助言を行っている。
少年院では,必要に応じて,家庭裁判所等の関係機関を始めとして,学校,病院,民間の篤志家等に対して協力を求め,その専門的な知識・技術を活用して在院者の改善更生を図っている。
民間の篤志家として,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS会員等が支援活動を行っている。篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行っている。教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っている。更生保護女性会員,BBS会員等は,定期的に少年院を訪問し,様々な形で少年院の処遇を支援している(第2編第4章第3節3項及び第5章第5節4項並びに第7編第2章第2節1項参照)。
少年院は,出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては,その意向を尊重しつつ,保護観察所と連携して,適切な帰住先を確保すること,医療及び療養を受けることを助けること,修学又は就業を助けることなどの社会復帰支援を行っている。
また,法務省では,平成18年度から,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しているが,少年院でも,その一環として,在院者に対して,ハローワークの職員による職業相談等を実施している(第2編第4章第2節4項及び第7編第3章第1節3項(1)ア参照)。
さらに,平成21年度からは,厚生労働省と連携し,障害を有し,かつ,適当な帰住先がない在院者に対して,出院後速やかに福祉サービスを受けることができるようにするための特別調整を実施している(第2編第4章第2節5項及び第5章第1節2項並びに第7編第3章第1節2項(1)イ参照)。