前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成28年版 犯罪白書 第5編/第2章/第7節/1

第7節 暴力団関係者等再犯リスクの高い者
1 暴力団関係者等再犯リスクの高い者の再犯防止に関する各種施策

総合対策では,暴力団関係者に対し,関係機関の情報連携の下,個々の離脱意志の程度,暴力団との関係性,刑務所等での暴力団離脱指導の受講態度等に関する情報を的確に把握し,真摯な離脱意志を有する者に対して必要な支援を継続的に実施することとされ,再犯要因としてアルコール依存を含む問題飲酒,ドメスティック・バイオレンス(DV)を含む対人暴力等の問題性が大きい者については,その問題性を早期に把握し,適切な処遇・指導を実施することとされている。

暴力団関係者に対する施策としては,刑事施設において,平成18年度から,受刑者に対する特別改善指導の一つとして「暴力団離脱指導」が行われ,警察と協力した離脱支援が実施されている(第2編第4章第2節3項(2)参照)。また,25年度から,受刑中の離脱支援の結果,仮釈放となった保護観察中の者について,暴力団関係者との交際等に係る警察から保護観察所への情報提供が実施されているほか,保護観察所において,離脱を希望した者に対して,各種就労支援制度(第2編第5章第2節2項(4)参照)の活用等を積極的に行っている。

飲酒に関する問題性を有する者に対する施策としては,刑事施設において,平成22年度から,特別改善指導の一つである「交通安全指導」(第2編第4章第2節3項(2)参照)の一環として,実施対象施設(28年度は3庁)を指定し,民間自助団体等の協力を得つつ,飲酒運転事犯者に対する「アルコール依存回復プログラム」が行われている。さらに,犯罪の背景要因として飲酒の問題を抱える者が一定数存在しているとの各種調査の指摘や,アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号。26年6月1日施行)の制定を踏まえ,28年度から,交通安全指導の対象となっていない受刑者に対しても,一般改善指導の枠組みで,同プログラムを実施する取組が開始されている。また,保護観察所においても,関係省庁により構成される常習飲酒運転者対策推進会議の決定「常習飲酒運転者対策の推進について」を受け,22年度から,専門的処遇プログラムの一つとして「飲酒運転防止プログラム」(第2編第5章第2節2項(2)ウ参照)が行われている。

対人暴力の問題性を有する者に対する施策としては,刑事施設において,平成26年度から,一般改善指導の枠組みで,実施対象施設(28年度は14庁)を指定し,暴力事犯者(DVや児童虐待に係る事件を起こした者を含む。)に対する「暴力防止プログラム」が行われている。また,保護観察所でも,20年度から,専門的処遇プログラムの一つとして「暴力防止プログラム」(第2編第5章第2節2項(2)ウ及び本節コラム参照)が行われており,刑事施設におけるプログラムの実施結果等の情報が地方更生保護委員会及び保護観察所に引き継がれ,仮釈放者に対する処遇等に活用されるなど,施設内と社会内とで一貫性を持った指導がなされている。

さらに,指導及び支援の必要性を踏まえて矯正処遇を効果的・効率的に行うため,罪種を問わず,個々の受刑者の再犯に至るリスク等を的確に把握できるよう,平成25年度から,刑事施設における成人受刑者用のリスクアセスメントツールの開発・試行が進められている。

また,少年院在院者のうち暴力団関係者等再犯リスクの高い者に対しては,平成27年6月に施行された新たな少年院法に基づき,特定生活指導として「暴力防止指導」や「交友関係指導」が実施されており,これらの指導の「周辺プログラム」の中で,暴力団からの離脱指導等が行われている(第3編第2章第4節2項(2)ア参照)。