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平成28年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/3

3 矯正指導

受刑者処遇の中核は,作業のほか,改善指導及び教科指導である。これらの指導に加え,刑執行開始時及び釈放前の指導も行うが,これらの四つを総称して矯正指導という。

(1)刑執行開始時の指導

受刑者には,入所直後,原則として2週間の期間で,受刑等の意義や心構え,矯正処遇を受ける上で前提となる事項(処遇制度,作業上の留意事項,改善指導等の趣旨・概要等),刑事施設における生活上の心得,起居動作の方法等について指導が行われる。

(2)改善指導

改善指導は,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行うもので,一般改善指導及び特別改善指導がある。

一般改善指導は,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の方法により,<1>被害者及びその遺族等の感情を理解させ,罪の意識を培わせること,<2>規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し,心身の健康の増進を図ること,<3>生活設計や社会復帰への心構えを持たせ,社会適応に必要なスキルを身に付けさせることなどを目的として行う改善指導である。

特別改善指導は,薬物依存があったり,暴力団員であるなどの事情により,改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するよう特に配慮して行う改善指導である。現在,<1>「薬物依存離脱指導」(薬物使用に係る自己の問題性を理解させた上で,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせるなど。平成27年度の実施対象施設数は76庁),<2>「暴力団離脱指導」(警察等と協力しながら,暴力団の反社会性を認識させる指導を行い,離脱意志の醸成を図るなど。同36庁),<3>「性犯罪再犯防止指導」(性犯罪につながる自己の問題性を認識させ,再犯に至らないための具体的な方法を習得させるなど。同19庁),<4>「被害者の視点を取り入れた教育」(罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるなどし,被害者等に誠意をもって対応するための方法を考えさせるなど。同77庁),<5>「交通安全指導」(運転者の責任と義務を自覚させ,罪の重さを認識させるなど。同55庁)及び<6>「就労支援指導」(就労に必要な基本的スキルとマナーを習得させ,出所後の就労に向けての取組を具体化させるなど。同64庁)の6類型の特別改善指導を実施している。特別改善指導の受講開始時人員の推移(最近5年間)は,2-4-2-3表のとおりである。

2-4-2-3表 特別改善指導の受講開始時人員の推移
2-4-2-3表 特別改善指導の受講開始時人員の推移
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(3)教科指導

教科指導とは,学校教育の内容に準ずる指導である。社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対して行う教科指導(補習教科指導)のほか,学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる受刑者に対しても,その学力に応じた教科指導(特別教科指導)を行っている。

平成19年度からは,法務省と文部科学省の連携により,刑事施設内において,高等学校卒業程度認定試験を実施し,また,指定された4庁の刑事施設において,同試験の受験に向けた指導を積極的に実施している。27年度の受験者数は503人,合格者数は,高卒認定合格者が212人,一部科目合格者が270人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。

また,松本少年刑務所内には,我が国唯一の刑事施設内に設置された中学校があり,全国の刑事施設に収容されている義務教育未修了者のうち希望者を中学3年生に編入し,地元中学校教諭及び職員等が,文部科学省が定める学習指導要領を踏まえた指導を行っている。さらに,3庁の刑事施設には通信制課程の高等学校が設置され,そのうち2庁は全国の刑事施設から希望者を募集し,高等学校教育を実施しており,所定の課程を修了したと認められた者には,高等学校の卒業証書が授与される。

(4)釈放前の指導

受刑者には,釈放前に,原則として2週間の期間で,釈放後の社会生活において直ちに必要となる知識の付与や指導が行われる。講話や個別面接等の方法で,社会復帰の心構え(将来の生活設計や望ましい人生観・社会観等),社会生活への適応(社会状況の変化,望ましい人間関係の在り方等),社会における各種手続に関する知識(社会保障や法律関係手続等)を付与したりするほか,必要に応じ,刑事施設の職員が同行して社会見学をするなどの方法で指導を行っている。また,刑事施設には,「開放寮」等と称されている,施錠が厳格に行われないなどの開放的な居住区域が設けられており,釈放前の時期には,円滑な社会復帰を図るために,受刑者の処遇をこの居住区域で行うこともある。