我が国の雇用情勢に関する経済指標である完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の比率をいう。以下この節において同じ。)について,バブル経済期以降の推移(平成元年以降)を見ると,6-2-2-1図のとおりである。完全失業率は,平成4年から上昇し続け,14年には最悪となる5.4%を記録し,同年までの10年間で2倍以上に上昇した。その後は,15年から19年にかけて大きく低下し,いわゆるリーマン・ショックに象徴される世界的な金融不安に伴って一時的には上昇したものの,23年以降は一貫して低下している。
窃盗事犯は,金品の取得を直接的な目的とする利欲的な犯罪の典型であり,窃盗事犯者においても生活困窮や借金返済等といった何らかの経済的事情を動機や背景事情として抱えていることの多い犯罪類型であり,窃盗の検挙人員の約3割が年金等生活者以外の無職者で占められていることからすれば(6-2-1-4図P211参照),雇用情勢の変化が窃盗事犯の増減に与える影響は少なくないと思われる。とりわけ,侵入窃盗,自動車盗,車上ねらい及びひったくりの各手口は,検挙人員に占める無職者の割合が極めて高いところ(本章第1節2項(2)ウP216参照),いずれの認知件数も平成14年ないし15年までに大幅に増加したが,その後は大きく減少しており(6-2-1-5図P212参照),これらの傾向は雇用情勢の変化とも関係しているものと思われる。
6-2-2-2図は,少年(14歳以上の者に限る。以下この節において同じ。)及び高齢者について,各人口と窃盗の検挙人員の人口比の推移(最近20年間)を見たものである。
少年の人口は,減少傾向にあり,平成25年は6年と比べ約3割減少している。少年の窃盗の検挙人員の人口比は,10年まで上昇し続けた後,その後は若干の低下と上昇を経ながらも,おおむね低下傾向にあるが,25年(461.1)は10年(1,075.2)と比べると半減しており,少年人口の減少の程度よりも少年の窃盗の検挙人員が大きく減少していることが分かる。
これに対し,高齢者の人口は,一貫して増加しており,平成25年は6年と比べ約8割増加した。窃盗の検挙人員においても高年齢化が進展しており(6-2-1-2図P210参照),とりわけ万引きにおける高齢者の増加は顕著であるが(6-2-1-7図P215参照),高齢者の窃盗の検挙人員の人口比は,25年(106.8)は6年(42.9)と比べると約2.5倍に上昇しており,窃盗の検挙人員における高齢者の増加が高齢者人口の増加をはるかに上回っていることが分かる。
これらのことから,人口における少子高齢化の進展のみでは,窃盗事犯者における少年の割合の低下と高年齢化を説明することはできない。