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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第5章/第2節/3 

3 刑事施設における性犯罪再犯防止指導

 平成16年11月に奈良県で発生した女児誘拐殺人事件等を契機として,法務省は,18年3月までに性犯罪者処遇プログラムを策定し,18年度から全国の20の指定刑事施設において性犯罪再犯防止指導を実施している。従来も,一部の刑事施設においては,性犯罪再犯防止のための教育が行われていたが,このようなプログラムが全国規模で組織的に実施されるのは,我が国においては初めてである。これによって,19年3月31日までに全国の刑事施設で266人が48のグループに分かれてプログラムを受講している(法務省矯正局の資料による。本章第4節2(2)参照)。
 対象受刑者は,再犯リスクや処遇ニーズに応じて,高密度,中密度,低密度の3コースのいずれかを受講する。実施初年度である平成18年度は,出所予定日を勘案して優先度の高い対象者から実施された。
 性犯罪再犯防止指導対象者には,プログラム受講の意義を理解させ,動機付けを高めるためのオリエンテーションが行われる。次いで,8人程度の受講者におおむね2人程度の指導者が加わったグループが編成され,そのグループにおけるグループワークを中心にプログラムが実施される。高,中,低のいずれのコースにおいても,性犯罪を防ぐための自己統制力を身に付けさせる科目が必修とされている。高,中のコースの受講者に対しては,これに加え,性犯罪の背景となっている認知のゆがみを修正させるための科目や円滑な対人関係を築くスキルを身に付けさせるための科目,他人に対する共感性や被害者に対する理解を高めるための科目等の受講が本人の問題性に応じて義務付けられる。
 さらに,平成19年度においては,犯罪傾向の進んだ者に対する指導の充実,標準プログラムの受講になじまない能力が低い者に対する調整プログラムの開発・試行及びプログラムの受講に消極的・拒否的な者等への対応プログラムの開発・試行に取り組んでいる。