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 平成13年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/2 

2 主要刑法犯の動向

 最近の刑法犯の認知件数の増加は,その主な要因が窃盗と交通関係業過の増加であるが,これらについては第4編第2章第3章において記述するので,以下,本節では,窃盗と交通関係業過を除く刑法犯(以下,本節では「窃盗を除く一般刑法犯」という。)の動向を見ることとする。

(1) 罪名別認知件数・検挙件数・検挙人員の推移

 I-3図は,凶悪犯(殺人,強盗),粗暴犯(傷害,暴行,脅迫,恐喝),財産犯(詐欺,遺失物等横領を除く横領,遺失物等横領,盗品譲受け等),性犯罪(強姦,強制わいせつ,公然わいせつ,わいせつ物頒布等),その他の刑法犯(放火,略取・誘拐,文書偽造・有価証券偽造,とばく・富くじ,器物損壊等,住居侵入)の順に,最近10年間における認知件数,検挙件数及び検挙人員の推移を見たものである(巻末資料I-2参照)。

I-3図 刑法犯の主要罪名別認知件数・検挙件数・検挙人員

(2) 罪名別犯罪の動向

 窃盗を除く一般刑法犯の認知件数の増減やその特徴などの動向については,第4編第2章第3節で詳しく記述するので,本項では,その全般的な概要を見ることとする。
ア 凶悪犯
 殺人の認知件数,検挙人員及び検挙件数は,平成12年では,いずれも前年の減少から増加に転じ,ここ10年間で最高の認知件数(前年比126件・10.0%増)及び検挙人員(同103人・7.8%増)となり,検挙件数も103件(8.4%)増加した。
 強盗の認知件数は,その著しい増加(前年比936件・22.1%増)が持続される一方,検挙件数(同128件・4.6%増)と検挙人員(同35人・0.9%増)の増加が鈍化した。
イ 粗暴犯
 粗暴犯では,平成12年は前年と比べ,傷害が9,951件(49.2%)増,暴行が5,433件(69.7%)増,脅迫が1,052件(105.7%)増及び恐喝が4,158件(28.2%)増と,いずれの認知件数も,ここ10年来で見られなかった著しい増加を示している。
 これに伴い,前年までは,上記4罪種のいずれにおいても共に減少傾向にあった検挙件数・検挙人員が,前年と比べ傷害では6,087件(38.9%)・7,407人(33.7%),暴行では2,444件(51.4%)・2,614人(47.5%),脅迫では655件(75.4%)・562人(62.7%),恐喝では1,534件(21.3%)・1,920人(20.6%),それぞれ大幅に増加した。
ウ 財産犯
 詐欺の認知件数は,前年と比べ,953件(2.2%)増加したものの,検挙件数が3,085件(8.0%)減少した。その反面,検挙人員は314人(3.8%)増加した。
 横領(遺失物等横領を除く。)は,認知件数,検挙件数及び検挙人員のいずれも長期減少傾向にあったが,平成12年では増加に転じ,前年と比べ,認知件数が324件(26.4%),検挙件数が117件(10.5%),検挙人員が212人(27.9%),いずれも増加した。
 遺失物等横領の認知件数等は,過去2年間の増加傾向から大幅な減少となり,前年と比べ,認知件数が1万1,785件(17.4%),検挙件数が1万2,112件(18.0%),検挙人員が1万2,915人(18.4%),それぞれ減少した。
 盗品譲受け等では,過去3年間の認知件数等の増加傾向がさらに加速された結果,認知件数では229件(15.2%),検挙件数では230件(15.4%),検挙人員では202人(13.6%)増加した。
エ 性犯罪
 強姦,強制わいせつ及び公然わいせつの認知件数は,強姦が403件(21.7%),強制わいせつが2,066件(38.6%),公然わいせつが342件(28.2%)増加した。これに伴い,その検挙件数・検挙人員も,強姦が171件(12.5%)・94人(6.8%),強制わいせつが214件(6.3%)・360人(18.7%),公然わいせつが214件(18.4%)・77人(7.0%),それぞれ増加した。
 これらに対し,わいせつ物頒布等は,認知件数が40件(6.7%),検挙件数が44件(7.4%),検挙人員が13人(1.7%),それぞれ減少した。
オ その他の刑法犯
 検挙件数等の増減を繰り返しているのが放火と略取・誘拐であり,平成12年は,認知件数・検挙件数・検挙人員の順で,前年と比べ放火が,15件(0.9%)増・86件(5.9%)減・39人(5.2%)増であり,略取・誘拐が,53件(21.3%)増・28件(11.5%)増・16人(9.8%)増である。
 認知件数の長期減少傾向にあるのが,文書偽造・有価証券偽造ととばく・富くじであり,同様の順で,前年と比べ文書偽造・有価証券偽造が,694件(8.4%)減・916件(11.2%)減・218人(16.2%)増であり,とばく・富くじが,15件(5.1%)減・13件(4.5%)減・422人(18.1%)減である。
 これらに対し,認知件数の著しい増加に比して検挙件数や検挙人員の増加が少ないのが,器物損壊等と住居侵入である。平成12年は,認知件数・検挙件数・検挙人員の順で,前年と比べ器物損壊等が,3万4,391件(64.2%)増・1,406件(28.4%)増・1,201人(42.0%)増であり,住居侵入が,6,427件(44.2%)増・724件(17.7%)増・577人(20.1%)増である。