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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第3章 

第3章 交通犯罪

 16歳以上の国民の約7割が運転免許を保有し,自動車が生活の一部となった現代の車社会において,交通犯罪は,国民の誰もが加害者にも被害者にもなり得るという意味で,非常に身近な犯罪となった。交通事故の発生件数及び負傷者数は,昭和44,45年をピークとして,その後減少傾向を示していたが,53年以降再び増加に転じ,平成5年には交通事故発生件数が,10年には負傷者数が,それぞれ過去のピークを突破して,以後,年毎に過去最高記録を更新し続け,12年には,事故発生件数が93万件台,負傷者数が115万人台となった。また,死亡者数も第2のピークである平成4年の1万人台より減少したものの,なお交通関係業過を除く刑法犯の被害者の数倍にものぼる毎年9,000人以上の尊い人命が失われており,これらの数字は,国民の生命・身体の安全を考える上で憂慮される。
 近時,悪質な交通犯罪の多発を契機に交通犯罪に対する国民の関心が高まっており,交通犯罪に対する刑事司法のあり方も問われている。法務総合研究所では,平成5年版白書で,特集として「交通犯罪の現状と対策」を取り上げ,交通犯罪が憂慮すべき状況にあることを指摘したが,現下の情勢にかんがみ,再び「交通犯罪」を特集の一部として取り上げる。
 本章では,第1節では「交通事故の増加」について,第2節では「交通犯罪の動向と処理状況」について,第3節では「諸外国における交通犯罪の実情とその対策」について,それぞれ述べることとする。