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 平成13年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/3 

3 注目される類型の刑法犯の動向等

 本項においては,刑法犯のうち,社会一般の注目を受けることが多い類型の刑法犯の動向等を見ることとする。

(1) 保険金目的殺人

 I-2表は,資料の存する平成4年以降における保険金目的殺人の検挙件数の推移を見たものであるが,10年以降は増加が続いている。

I-2表 保険金殺人の検挙件数

(2) 各種の強盗事件

 警察庁刑事局の資料によれば,平成12年におけるけん銃・小銃等の銃器発砲を伴う強盗事件の認知件数は15件(前年9件)であるが,このうち8件は,現金輸送車や金融機関を対象としたものである。
 I-3表は,最近10年間の現金輸送車を対象とした強盗事件について,I-4表は,最近10年間の金融機関強盗事件について,それぞれ認知件数,検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。

I-3表 現金輸送車強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率

I-4表 金融機関強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率

 また,近年,強盗の認知件数が増加しているが(第4編第2章第3節2参照),その中でも,路上強盗及び終日営業のコンビニエンスストア等の深夜スーパーマーケットを対象としたいわゆるコンビニ強盗の認知件数が急増している。I-5表は,最近10年間の路上強盗や深夜スーパーマーケット対象強盗事件について,それぞれ認知件数,検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。路上強盗は平成8年以降において,深夜スーパーマーケット対象強盗は10年以降において,増加が顕著である。

I-5表 路上強盗及び深夜スーパーマーケット対象強盗の認知件数・検挙件数・検挙率

(3) 児童虐待事件

 I-6表は,平成12年における児童虐待にもとづく刑法犯の検挙件数及び検挙人員を前年と比較したものである。なお,児童虐待とは,保護者(親権を行う者,未成年の後見人その他の者で,児童を現に監護するものをいう。)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。)に対して,身体的虐待,性的虐待,心理的虐待,怠慢又は拒否の行為をすることとされている。

I-6表 児童虐待に係る刑法犯の検挙件数・検挙人員

 保護責任者遺棄及び重過失傷害・致死を除いて,どの罪種においても,検挙件数・検挙人員とも大幅に増加している。
 一方,I-7表は,平成12年に刑法犯により検挙された上記事件について,罪種別に加害者と被害者との関係を見たものである。殺人については,実母が加害者であるものが約3分の2を占め,傷害については,母親の内縁の夫が加害者であるものの比率が最も高い。

I-7表 児童虐待に係る刑法犯の罪種別加害者と被害者との関係

 なお,平成12年5月24日,児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)が公布され,同年11月に施行された。同法には独自の罰則規定は置かれていないが,児童虐待について,従前の家庭内の問題であるとのとらえ方を,より社会全体の問題であるとしてとらえ直し,児童相談所の立入調査権限が強化されるなどした。また,児童虐待に係る犯罪について,従来は親の懲戒行為であるとして見過ごされてきたとの指摘を踏まえ,親権を行う者であることを理由として,その責めを免れることはないことが明記された。

(4) カード犯罪

 I-8表は,クレジットカード,キャッシュカード及び消費者金融カードを悪用した犯罪について,最近10年間における認知件数,検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。

I-8表 カード犯罪の認知件数・検挙件数・検挙率

 なお,平成13年6月26日,刑法の一部を改正する法律(平成13年法律第97号)が制定された。同法により,人の財産上の事務処理の用に供する電磁的記録であって,これらの支払用カードを構成するものの不正作出・供用・譲渡・貸与・輸入等の行為や,不正作出の用に供する目的による当該電磁的記録の情報の取得・提供・保管等の行為が新たに処罰の対象とされた。同法は同年7月に施行された。

(5) 組織犯罪

 平成11年8月18日,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号)が制定され,12年2月に施行された。同法は,殺人や逮捕監禁等の特定の刑法犯の罪が,[1]団体の活動として,その罪に当たる行為を実行するための組織により行われた場合,[2]または,団体に不正な権益を得る目的等で実行された場合に,いずれも刑の加重処罰を規定した。さらに,これらの刑法犯及びその他の特定の犯罪に係る犯罪収益等を仮装・隠匿・収受等する行為又は犯罪収益等を用いて法人等の事業経営の支配を目的とする役員変更等の行為を処罰する規定を設けたほか,犯罪収益等の没収・追徴並びにそのための保全手続に関する規定等を定めている。同年における同法違反による検察庁新規受理人員は,26人であり,内訳は,組織的なとばく開帳等図利が23人,不法収益等による法人等の事業が1人,犯罪収益等隠匿が2人である(検察統計年報による。)。