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 平成12年版 犯罪白書 第7編/第7章/5 

5 暴力組織関係保護観察付き執行猶予者の実態

 法務総合研究所では,平成11年1月1日から同年10月31日までの間に保護観察を終了した保護観察付き執行猶予者のうち,[1]類型別処遇において「暴力組織」類型に認定された者及び[2]保護観察開始当初に,遵守事項を守るための指示事項として,暴力組織に関する事項を指示された者(302人)を対象に,保護観察事件記録に基づく特別調査を実施した。
 暴力組織内の地位又は暴力組織との関係については,幹部が1割,組員が4割弱等となっており,調査対象者が暴力組織からの離脱や絶縁の意思を有することを示す何らかの資料が認められたのは43.0%である。
 保護観察開始当初又は保護観察の過程で発生した問題点について見ると,「就労状況が不安定(頻回転職,無職)である」及び「本人と暴力組織との関係が強い」には,それぞれ総数の6割以上が該当しているほか,「規範意識,遵法精神が欠如している」及び「薬物の乱用が見られる」にも,それぞれ総数の3分の1以上が該当している。事件記録から問題点の改善の有無について見ると,改善したとするものの比率が高いのは,「薬物の乱用が見られる」,「就労先又は生計の手段に問題がある」などであり,改善しなかったとするものの比率が高いのは,「言動に表裏性がある」,「価値観が偏っている」などである。
 保護観察終了事由は,期間満了が62.6%,取消しが35.8%(再犯31.8%,余罪1.3%,遵守事項違反2.6%)となっており,平成11年に保護観察を終了した保護観察付き執行猶予者全体と比べると,期間満了の比率がやや低く,取消しがやや高くなっている。
 保護観察中に再犯(公判請求されたもの,罰金等に処されたもの又は起訴猶予となったもののいずれか)があった者は,総数の50.3%に当たる152人である。再犯事件と暴力組織との関連があるものは少なく,再犯時期は6月以内のものが約3分の1,1年以内のものが約半数となっている。公判請求された者(111人)のうち102人(91.9%)は,執行猶予取消しにより保護観察が終了しており,罰金等に処されたもののうち9割近くは保護観察所において何らかの措置がとられている。