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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第6章/1/(2) 

(2) 経済活動に関係する犯罪の動向と処理状況

 各種税法違反の罪による検察庁新規受理人員においては,所得税法違反及び法人税法違反の占める比率が大きく,これらの罪による新規受理人員は,昭和30年代から増加傾向にあったが,所得税法違反においては平成4年(397人),法人税法違反においては5年(350人)に,それぞれ戦後最高を記録した後は,増減を繰り返している。一般に税法違反事件の起訴率は高く,近年において,所得税法違反及び法人税法違反の起訴率はおおむね80%台から90%台で推移している。実刑率は10%弱程度である。
 商法違反の検察庁新規受理人員は,昭和50年代半ばからおおむね100人を下回る状態が続いていたが,平成9年以降は,連続して100人を上回っている。独占禁止法違反については,昭和50年以降は,ほとんどの年において新規受理がなかったが,平成2年に公正取引委員会が告発に関する積極方針を明らかにした後は,隔年に新規受理人員を計上している。証券取引法違反については,4年に証券取引等監視委員会が新設された後,新規受理人員がほぼ毎年20人を上回るようになり,9年には戦後最高の89人を受理した。近年において,独占禁止法違反については,公正取引委員会からの告発がなされた事件の全件が公判請求されており,商法違反及び証券取引法違反においても,終局処理人員の3分の1から半数前後が起訴されている。一方,これらの罪については,商法違反以外,近年実刑に処された者はいない。もっとも,法人に対する罰金刑の上限が大幅に引き上げられた独占禁止法違反及び証券取引法違反については,最高で罰金1億円に処されたものを含めて,既に相当数の法人が,当該引き上げ前における上限を上回る罰金刑を科されている。
 各種知的所有権法違反の罪による検察庁新規受理人員においては,商標法違反の占める比率が大きく,商標法違反の新規受理人員は,昭和50年代から増加傾向にあったが,61年に戦後最高(592人)を記録した後は,200人台から300人台の範囲で増減を繰り返している。近年,商標法違反の起訴率は,70%台から80%台で推移しているが,実刑率は変動を繰り返している。