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1 経済犯罪に対する科刑状況等 ドイツでは,贈賄罪のうち,一般の公務員に対する利益の供与については3年以下の自由刑又は罰金刑,裁判官又は仲裁人に対する利益の供与については5年以下の自由刑又は罰金刑により処罰される。
税法違反については,租税基本法が罰則を設けており,課税上重要な事実に関する不正申告行為等については,5年以下の自由刑又は罰金刑による処罰の対象になる。なお,税法違反事件においては,財務官庁は単独で刑事手続上の捜査を行うことができ,その際には刑事訴訟法上検察官と同じ権限を行使することができる。また,財務官庁は,捜査が終結した時は,裁判所に略式命令を請求する権限も有しており,略式命令手続が不相当であると判断するときは記録を検事局に送付する。 証券取引法においては,各種の不公正取引行為等について規制が行われており,そのうちインサイダー取引(内部者情報の漏示行為を含む。)についての法定刑は,5年以下の自由刑又は罰金刑とされている。 知的所有権については,特許権,著作権,商標権のいずれの侵害についても,法定刑は,3年以下の自由刑又は罰金刑とされており,業として行われたこれらの侵害行為については,刑の加重があり,5年以下の自由刑又は罰金刑とされている。裁判所は,有罪の判決を言い渡すに際して,損害を受けた者からの請求があり,かつ,その者が正当な利益を示した場合には,判決の公表を命ずることとされている。 VI-39表は,贈賄罪,税法違反,著作権法違反及び商標法違反について,1993年から1997年までの5年間における自由刑の科刑状況を見たものである。 VI-39表 経済犯罪に対する自由刑の科刑状況 贈賄罪については,罰金刑を含めた有罪人員が相当な増加傾向にあるが,その中に占める自由刑言渡し人員の比率(自由刑率)は1995年以降は30%前後で推移している。刑期は,いずれの年においても,1年以下の者が自由刑を言い渡された者の6割以上を占めるが,2年を超える実刑に処された者も1割前後の比率で存在する。税法違反については,罰金刑を含めた有罪人員は1万1,000件台から1万4,000件台の範囲で推移しているが,自由刑率は上昇傾向を示している。刑期は,いずれの年においても,1年以下の者が自由刑を言い渡された者の7割前後を占め,2年を超える実刑に処された者の比率は3%から5%程度である。 著作権法違反及び商標法違反についても,自由刑率は上昇傾向にある。自由刑の刑期は,ほとんどが1年以下で,執行猶予が付されている。 ドイツは,罰金刑については,一般に日数罰金制を採用している。日数罰金制は,罰金刑の言渡しについて,日数と日額の2段階に分けて量刑を行い,両者を掛け合わせた金額が罰金額になるという制度であり,日数の量定においては,行為者の経済事情を原則として除いた,あらゆる量刑事情が考慮され,一方,日額の量定においては,行為者の一身上及び経済上の関係が考慮される。 VI-40表は,贈賄罪,税法違反,著作権法違反及び商標法違反について,1993年から1997年までの5年間における罰金刑の科刑状況を見たものである。 VI-40表 経済犯罪に対する罰金刑の科刑状況 1994年の商標法違反で「16〜30日」が最も多くなっている以外は,「31〜90日」が最も多くなっている。 |