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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第4章/第1節/2 

2 企業倒産をめぐる犯罪の動向

(1) 検察庁における新規受理人員の動向

 VI-6図は,昭和24年以降における強制執行妨害・競売入札妨害・破産法違反による検察庁新規受理人員の推移を示したものである(巻末資料VI-4参照)。

VI-6図 強制執行妨害・競売入札妨害・破産法違反の検察庁新規受理人員の推移

 強制執行妨害は,昭和30年代前半までおおむね増加傾向にあり,33年には最高の163人に達した。その後も40年代初頭までは,毎年100人以上を受理していたが,43年に100人を下回ってからは,増減を繰り返しながらも,おおむね減少傾向にあり,平成元年から7年までは20人を下回った。しかし,8年に受理人員が9年ぶりに40人を上回った後は,30人台から40人台で推移し,11年は46人で,前年より7人増加した。
 競売入札妨害は,昭和25年の317人をピークとして,その後増減を繰り返しながらも,おおむね減少傾向にあり,58年から平成5年までは,11年連続で,受理人員が100人を下回った。しかし,6年に受理人員が37年ぶりに200人を上回った後は,おおむね増加傾向にあり,9年には最高の469人を受理した。11年は279人で,前年より37人減少した。
 破産法違反は,昭和40年代前半までおおむね増加傾向にあり,43年には最高の57人を受理した。その後は,増減を繰り返しながらも,おおむね減少傾向にあり,平成2年から6年までは,受理人員が10人を下回った。しかし,その後,7年には,6年ぶりに10人を上回り,さらに9年には,13年ぶりに20人を上回るなど,増加に転じる兆しを示しており,11年は24人で,前年より15人増加した。
 なお,対象期間を通じた新規受理人員総数に占める検察官認知及び直受(検察官が独自に犯罪があるものと認めて事件を受理し,あるいは告訴・告発人から直接に告訴・告発を受けて事件を受理することをいう。)による受理人員の比率は,交通業過を除く刑法犯については約2%,道交違反を除く特別法犯については約5%である(特に昭和50年代以降は,いずれも1%台である。)のに対し,強制執行妨害,競売入札妨害及び破産法違反については,検察官認知及び直受による受理人員の比率が高く,対象期間を通じた受理人員総数に占める比率は,最も低い競売入札妨害が16.9%,強制執行妨害が46.2%,最も高い破産法違反では66.0%に達している(検察統計年報による。)。

(2) 金融機関における不良債権の処理をめぐる犯罪の動向

 前記のとおり,住管機構,整理回収銀行,整理回収機構等の役職員には,破綻金融機関における不良債権の回収等に関連する犯罪に関して,告発に向けて所要の措置をとる義務が課されているが,VI-20表は,これらの組織別及び告発事案の内訳別に,平成12年3月31日現在の告発件数及び人員を示したものである。

VI-20表 金融機関における不良債権の処理をめぐる犯罪に関する告発件数・告発人員

 告発件数,告発人員とも,借り手に関する事案の方が貸し手に関する事案より多く,いずれも総数の8割以上を占めている。借り手に関する事案の中では,告発件数,告発人員とも,競売入札妨害が最も多く,詐欺,強制執行妨害がこれに続いている。貸し手に関する事案では,告発件数,告発人員とも,大半が背任・特別背任である。