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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第3章/第4節 

第4節 まとめ

 本調査の結果を簡潔にまとめると,以下の各点を挙げることができる。
[1]犯罪行為に及んだ者が所属する企業の業種は,総数では,建設業が最も多く,次いでサービス業,製造業となっている。罪名別にみると,証券取引法違反では金融・保険業,独占禁止法違反では製造業,贈賄及び競売入札妨害では建設業,廃棄物処理法違反ではサービス業が,それぞれ高い構成比を示している。
[2]企業規模としては,資本金3,000万円未満の企業が7割を超え,従業者20人未満の企業が半数を超えるなど,全体として,比較的小規模の企業が多くなっている。その一方で,全企業の0.1%に過ぎない資本金50億円以上の企業が,本調査の所属企業では6.3%を占めているなど,資本金の大きい企業の占める構成比が,相対的に高くなっている。
[3]行為者の役職は,所属企業の規模が小さい場合には「代表取締役・会長・社長」の構成比が高く,規模が大きくなるにしたがって,その構成比が低くなり,逆に,「役員以外の役職者」の構成比が高くなっており,企業犯罪に関して処罰される行為者は,小規模企業においては企業経営者,大規模企業においては下位の従業者が多いことがうかがわれる。
[4]行為者に対する科刑は,ほとんどが執行猶予であり,実刑は全体の6.1%に過ぎない。しかも,実刑のほとんどは,法人税法違反及び商法違反であり,証券取引法違反及び独占禁止法違反では実刑は全く科されておらず,贈賄及び競売入札妨害でも極めて少ない。
[5]法人に対する科刑は,法人税法違反,証券取引法違反及び独占禁止法違反において比較的多額の罰金刑が科され,1億円を超える罰金刑が科されている例もあるが,他の罪名で科されている罰金額は,すべて300万円以下である。法人に対する罰金額は,資本金額との比較で見ると,法人税法違反において高く,独占禁止法違反及び証券取引法違反において低くなっている。