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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第2章/第2節/1 

第2節 経済犯罪の動向

1 所得税法違反・相続税法違反・法人税法違反・消費税法違反

 昭和24年以降における所得税法違反,相続税法違反,法人税法違反及び消費税法違反の検察庁新規受理人員の推移は,VI-3図のとおりである(巻末資料VI-1参照)。

VI-3図 所得税法違反・相続税法違反・法人税法違反・消費税法違反の検察庁新規受理人員の推移

 所得税法違反の新規受理人員は,昭和30年代後半から,おおむね増加傾向にあり,56年に初めて100人を超え,平成4年には最高の397人に達した。その後は,増減を繰り返しており,11年は71人で,前年より9人減少した。相続税法違反は,昭和59年までは,ほとんどの年において新規受理人員がなかったが,60年以降は,平成元年及び5年を除いて,新規受理人員を計上しており,11年は66人で,前年と比べ,64人の大幅増加を示した。法人税法違反の新規受理人員は,昭和30年代前半から,おおむね増加傾向にあり,51年以降,54年,55年,平成6年及び9年を除いて,200人を上回り,5年には最高の350人に達したが,11年は216人で,前年より52人減少した。消費税法違反は,昭和63年の施行から平成6年までは新規受理人員がなく,7年以降は,毎年新規受理人員を計上していたが,11年は,新規受理人員は1人のみであり,前年より20人減少した。
 VI-1表は,最近5年間の各会計年度に,国税庁から検察庁に告発された所得税法違反,相続税法違反,法人税法違反及び消費税法違反事件について,告発件数及び1件当たりの脱税額の推移を見たものである。平成11年度(会計年度)においては,総告発件数は合計148件で,その内訳は,所得税法違反が61件,相続税法違反が6件,法人税法違反が81件となっており,消費税法違反の告発はない。1件当たりの平均脱税額(加算税額を含む。以下同じ。)は,所得税法違反では約2億1,000万円(前年度比16.7%減),相続税法違反では約4億7,400万円(同9.2%減),法人税法違反では約1億6,000万円(同14.9%減)となっている。なお,脱税額が3億円以上の事件は24件,5億円以上の事件は7件となっている。

VI-1表 所得税法・相続税法・法人税法及び消費税法違反事件の告発件数並びに1件当たりの脱税額

 平成11年度(会計年度)の告発件数を業種別に見ると,卸売業,小売業及び貸金業が最も多く,14件(9.5%)で並んでおり,製造業,遊技場,建設業及び不動産業が,それぞれ9件(6.1%)でこれに続いている。また,脱税の手段・方法については,売上げ除外や架空経費の計上が主となっている。脱税によって得た利益の留保形態は,大半が預貯金,割引債券又は不動産である(国税庁の資料による。)。