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2 少年の保護観察 本節では,少年に対する保護観察のうち,主に保護観察処分少年及び少年院仮退院者について述べる。
(1) 保護観察事件の動向 III-53図は,昭和24年以降に保護観察所が新規に受理した保護観察対象者の人員を,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の別に示したものである(巻末資料II-12参照)。
III-53図 保護観察新規受理人員の推移 保護観察処分少年の新規受理人員は,昭和52年から交通短期保護観察が実施されたことに伴って急増し,58年以降7万人前後で推移していたが,平成3年以降減少した。その後,6年9月に短期保護観察が導入されたことなどにより,8年以降再び増加に転じたが,11年には,前年より365人(0.7%)減少して5万3,856人となっている(本項(4)参照)。少年院仮退院者についても,昭和52年に少年院に短期処遇が導入されたことなどに伴って増加したが,60年代初めから減少傾向にあった。しかし,平成9年以降再び増加に転じ,11年は,前年より372人(7.7%)増加して5,187人となっている。 なお,少年の保護観察対象者として,保護観察処分少年及び少年院仮退院者のほかに,少年の仮出獄者及び少年の保護観察付き執行猶予者があるが,平成11年における新規受理人員は,前者が1人(前年も1人),後者が28人(同30人)となっている。 (2) 保護観察対象少年の特徴 ア 非行名 III-54図は,平成11年における保護観察処分少年(交通短期保護観察を除く。以下,本項において同じ。)及び少年院仮退院者の新規受理人員を非行名別に見たものである。保護観察処分少年では窃盗及び道路交通法違反の比率が高く,少年院仮退院者では窃盗及び傷害の比率が高くなっている。
III-54図 保護観察処分少年及び少年院仮退院者新規受理人員の非行名別構成比 イ 年齢層 平成11年の保護観察処分少年及び少年院仮退院者の新規受理人員を年齢層別に見ると,III-55図のとおりである。保護観察処分少年では,16・17歳と18・19歳の占める比率がほぼ同率であり,少年院仮退院者では,18・19歳の占める比率が最も高いものの,20歳を超えて少年院を仮退院する者も13.9%に上っている。
III-55図 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の年齢層別構成比 非行の種類と年齢層との関係を見たのが,III-9表である。保護観察処分少年では,凶悪犯,粗暴犯及び財産犯について,16・17歳の占める比率が最も高く,性犯罪,交通事犯及び薬物事犯では,18・19歳の占める比率が最も高い。また,財産犯のほぼ4人に1人,凶悪犯及び粗暴犯のほぼ5人に1人が,いずれも15歳以下であり,少年院仮退院者と比べて年齢の低い者の比率が高い。少年院仮退院者については,財産犯では,16・17歳の占める比率が最も高くなるほかは,18・19歳の占める比率が最も高くなっている。しかし,薬物事犯で28.6%,性犯罪で21.5%の者が20歳を超えている。III-9表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の年齢層・非行の種類別構成比 ウ 国籍 平成11年における保護観察処分少年及び少年院仮退院者の新規受理人員の国籍(地域を含む。)別構成比を見ると,高い順に,それぞれ,保護観察処分少年では,日本98.4%,韓国・朝鮮0.9%,ブラジル0.4%,中国0.1%,その他0.2%,少年院仮退院者では,日本97.8%,韓国・朝鮮1.3%,ブラジル0.4%,中国0.2%,フィリピン,ヴィエトナム,ペルーがそれぞれ0.1%,その他0.1%となっている。少年院仮退院者では,10年と比べて,国籍の多様化が見られる(保護統計年報による。)。
エ 保護処分歴 平成11年の保護観察処分少年及び少年院仮退院者の新規受理人員を保護処分歴別に見ると,保護観察処分少年では,処分歴のない少年の比率が48.2%で最も高く,次いで,保護観察処分18.9%,不処分16.2%,審判不開始14.0%となっている。少年院仮退院者では,処分歴のない者は26.5%で,処分歴のある者は,保護観察処分39.6%,少年院送致16.3%,不処分7.7%,審判不開始5.8%となっている。処分歴のない者の比率は,10年までは,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれも比率が上昇していたが,11年は,いずれも,その比率が低下した(保護統計年報による。)。
オ 薬物等使用歴 平成11年の保護観察処分少年の新規受理人員のうち,受理時において薬物等を使用していた者の比率は16.2%であり,使用薬物等別に見ると,有機溶剤13.7%,覚せい剤1.9%等となっている。少年院仮退院者では,受理時において薬物等を使用していた者の比率は39.8%で,保護観察処分少年の倍以上である。使用薬物等別に見ると,有機溶剤28.4%,覚せい剤10.5%などとなっており,覚せい剤については,保護観察処分少年の5倍を超えている(保護統計年報による。)。
カ 不良集団関係 平成11年の保護観察処分少年の新規受理人員のうち,受理時において不良集団と交渉のあった者の比率は36.6%である。交渉のあった不良集団の内訳を高い順に見ると,暴走族(17.3%),地域不良集団(12.9%),不良生徒・学生集団(4.9%)などとなっている。少年院仮退院者では,その比率は61.8%に上っており,その内訳を高い順に見ると,暴走族(33.1%),地域不良集団(20.7%),暴力団(4.4%)などであり,暴力団については,保護観察処分少年(0.6%)の7倍を超えている(保護統計年報による。)。
キ その他 平成11年に新規に受理した保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,その他の特徴は次のとおりである(保護統計年報による。)。
(ア) 保護者の生活程度は,保護観察処分少年では,高い順に,「普通」(89.3%),「貧困」(8.5%),「富裕」(2.1%)であり,少年院仮退院者でも同様の順に,それぞれ,85.2%,13.2%,1.3%となっている。 (イ) 居住状況は,保護観察処分少年では,高い順に,「両親と同居」(60.6%),「母親と同居」(21.0%),「父親と同居」(7.1%)など,家族と同居している者が93.6%を占め,「単身」は3.8%となっている。少年院仮退院者でも同様の順に,それぞれ,55.3%,24.9%,9.6%であり,家族と同居している者は95.2%であるが,「更生保護施設」に居住する者も3.0%いる。 (ウ) 職業別では,保護観察処分少年では,高い順に,有職者が46.7%,学生・生徒が27.1%,無職者が25.2%となっている。他方,少年院仮退院者では,無職者が66.5%,有職者が26.4%,学生・生徒が5.9%の順となっており,無職者の占める比率が高い。 (エ) 教育程度では,保護観察処分少年では,高い順に,高校中退が36.6%,中学卒業が25.0%,高校在学が18.0%,高校卒業以上が12.1%,中学在学以下が7.7%などとなっている。他方,少年院仮退院者では,中学卒業が50.3%と最も多く,高校中退が39.6%,高校在学が3.5%であり,高校卒業以上及び中学在学以下の者の比率は低い。 (3) 保護観察処遇の状況 ア 成績良好者に対する措置 保護観察の期間中に行状が安定し,再非行のおそれがなくなったと認められる者に対しては,次のような措置(良好措置)が執られる。
[1] 保護観察処分少年 保護観察を終了させる解除 保護観察を一時停止させる良好停止 [2] 少年院仮退院者 保護観察を終了させる退院 平成11年に執られた良好措置は,解除が4万7,794人(前年4万8,057人)で,そのうち交通短期保護観察少年が2万9,723人(同3万1,034人)であり,良好停止が100人(同204人),退院が863人(同786人)となっている(保護統計年報等による。)。 イ 成績不良者に対する措置 保護観察の期間中に遵守事項違反,再非行等があった者に対しては,次のような措置(不良措置)が執られる。
[1] 保護観察処分少年 家庭裁判所へ新たな処分を求める通告 [2] 少年院仮退院者 少年院に再収容する戻し収容 平成11年に執られた不良措置は,通告36人(前年33人),戻し収容11人(同7人)となっている(保護統計年報等による。)。 (4) 各種の施策 ア 分類処遇制度 III-56図は,分類処遇制度(第2編第5章第3節3(1)参照)が発足した昭和46年以降のA分類率の推移を見たものである。少年院仮退院者のA分類率は高く,62年以降はおおむね30%台で推移していたが,近年は下降傾向にある。
III-56図 A分類率の推移 イ 類型別処遇制度 III-10表は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成11年12月31日現在において類型別処遇(第2編第5章第3節3(2)参照)の主な類型に該当している者の比率を見たものである。
III-10表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型別該当率 ウ 交通事犯少年に対する保護観察 交通短期保護観察制度は,交通関係の非行性が固定化していない少年に対して,安全運転等に関する集団処遇を行うとともに,毎月1回,自己の生活状況を報告させ,車両の運転による再犯がなければ,原則として3月以上4月以内の短期間に保護観察を解除するものである。
III-11表は,最近3年間における交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員と集団処遇の実施状況を示したものである。 III-11表 交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員及び集団処遇実施状況 エ 短期保護観察 短期保護観察は,交通関係業過や道交違反以外の犯罪により保護観察処分に付された少年のうち,非行性の進度がそれほど深くなく,短期間の保護観察によって改善更生が期待できるものを対象とするものである。この制度は,おおむね6月以上7月以内を実施期間として,少年の更生にとって特に重要な指導領域を選び,これに対応する一定の課題を与えた上で重点的な処遇を行うとともに,少年から定期的に生活状況を報告させることを中心として実施されている。
平成11年における短期保護観察少年の新規受理人員は4,382人(交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年の18.1%)となっている(保護統計年報による。)。 オ 社会参加活動 社会参加活動は,保護観察対象者を老人ホームでの介護補助や公園での清掃活動等の奉仕活動を中心とする諸活動に参加させるものであり,短期保護観察少年に対する課題の一つとして実施されている。それ以外でも,主として保護観察処分少年を対象に実施されている。平成11年度においては,全国で573回(前年度592回)実施され,1,699人(同1,679人)が参加している(法務省保護局の資料による。)。
(5) 保護観察の実施結果 ア 保護観察終了時の状況 III-57図は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,最近10年間における保護観察終了事由別人員の構成比の推移を見たものである。保護観察処分少年については,期間満了の占める割合が一貫して低下し,11年には11.7%となっている一方,解除の占める割合は上昇傾向にあり,同年は76.4%となっており,保護観察期間中の成績が良好な者に対しては,良好措置が積極的に執られてきていることがうかがわれる。
III-57図 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護観察終了事由別構成比 これに対し,少年院仮退院者については,退院の占める割合はおおむね20%前後であり,保護観察処分少年と比べて,良好措置の執られる比率が低くなっている。これは,複雑な問題を抱えている少年が少なくないことを反映しているものと思われる。イ 再犯の状況 最近10年間の各年中に保護観察が終了した者について,保護観察期間中に,再度の犯罪・非行(以下「再犯」という。)により刑事処分(起訴猶予を含む。)又は保護処分(戻し収容を除く。)(以下「再処分」という。)を受けた者の比率(以下「再犯率」という。)と再処分内容の推移を示したものがIII-12表である。
III-12表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の再犯率 再犯率は,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,平成8年までは,おおむね低下する傾向を示していた。しかし,保護観察処分少年については,9年以降一貫して上昇に転じ,11年中に保護観察が終了した者の再犯率は,17.0%となっている。これに対して,少年院仮退院者については,9年及び10年は続けて前年よりも上昇したものの,11年は22.5%と若干低下している。また,再処分の内容について見ると,両者とも,少年院送致の比率が高く,11年では,保護観察処分少年で8.1%,少年院仮退院者で14.8%となっている。再犯により実刑となる者の比率は,保護観察処分少年が0.2%,少年院仮退院者が0.3%である。平成11年に保護観察が終了した者の保護観察期間中の再犯について,受理時非行の種類別に,再犯の種類との関係を見たものが,III-13表である。保護観察処分少年では,受理時非行が凶悪犯であった者の再犯の種類は,財産犯,交通事犯及び粗暴犯で比率が高くなっている。受理時非行が粗暴犯,財産犯,交通事犯又は薬物事犯であった者では,いずれも受理時非行と同一の種類の非行を繰り返している者の比率が最も高いが,粗暴犯では,交通事犯の比率がそれに次いで高くなっている。受理時非行が性犯罪であった者の再犯は,粗暴犯の比率が最も高いが,性犯罪及び交通事犯がこれに次いでいる。少年院仮退院者では,受理時非行が凶悪犯であった者の再犯の種類は,交通事犯,粗暴犯及び財産犯で比率が高くなっている。受理時非行が粗暴犯,財産犯,交通事犯又は薬物事犯であった者では,保護観察処分少年と同様に,いずれも受理時非行と同一の種類の非行を繰り返している者の比率が最も高い。受理時非行が性犯罪であった者の再犯は,性犯罪,財産犯及び粗暴犯で比率が高くなっている。 III-13表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の非行の種類別・再非行の種類 |