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 平成12年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3 

3 鑑別業務

 少年鑑別所における鑑別業務は,家庭裁判所関係,法務省関係及び一般少年鑑別の三つに区分される。
 家庭裁判所関係の鑑別には,少年法17条1項2号による観護の措置の決定(少年鑑別所送致)によって身柄を収容した少年に対して行う収容鑑別と,身柄を収容しないで家庭裁判所の請求により行う在宅鑑別とがある。
 III-32図は,少年鑑別所における収容鑑別の対象少年に対する標準的な鑑別の流れを示したものである。

III-32図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の流れ

 収容鑑別においては,鑑別のための面接,身体状況の調査,心理検査,精神医学的検査・診察,行動観察及び関係機関,家族等からの資料の収集が行われる。こうした調査の結果から得られた情報は,少年鑑別所長,鑑別担当者等で構成する判定会議において総合され,当該少年の資質の特質及びその問題点並びに少年が非行にかかわることとなった要因及び再非行の危険性の程度が明確にされる。そして,改善更生のために最も適切な処遇方針等が鑑別判定意見として決定され,審判の前には,鑑別結果通知書としてまとめられ,家庭裁判所に提出される。
 鑑別の結果は,他の記録と共に少年簿に記載され,保護処分の決定がなされた場合,少年院,保護観察所等へ送付される。少年院送致の決定があった場合は,少年院において個人別に作成される個別的処遇計画の参考に供するため,処遇指針票が作成され,少年の身柄と共に送付される。
 在宅鑑別は,少年を家庭裁判所,少年鑑別所等に出頭させて行うもので,鑑別のための調査は,時間的な制約から,面接及び心理検査による場合がほとんどである。鑑別の結果は,鑑別結果通知書にまとめられ,家庭裁判所に提出される。
 法務省関係の鑑別は,関係機関からの依頼による鑑別で,次の三つがある。
[1] 検察庁主として捜査段階における少年に対する簡易鑑定
[2] 少年院主として処遇の過程において,問題等を改めて見直し,処遇計画の変更を考慮する必要がある少年に対する再鑑別
[3] 地方更生保護委員会・保護観察所主として仮釈放の審理又は保護観察の実施のため必要がある少年に対する鑑別
 一般少年鑑別は,主として社会一般の少年の教育,職業指導その他育成補導に関する方針の決定に資するため,一般市民,公私の団体等からの依頼を受けて資質の鑑別を行うものである。こうした業務を通じ,少年鑑別所は,地域社会の青少年相談センターの役割を果たし,広く一般市民の要望にこたえ,青少年の健全育成,非行防止等に寄与している。
 最近10年間における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-33図のとおりである。

III-33図 鑑別受付人員の推移

 平成11年における鑑別受付人員総数は,前年と比べ1,095人(1.7%)減少して6万2,253人となっている。鑑別受付人員の内訳では,一般少年鑑別が2万5,573人(総数の41.1%,前年比7.2%減)で最も多く,次いで,家庭裁判所の収容鑑別が2万1,144人(同34.0%,同4.3%増)となっている。また,法務省関係の鑑別のうち,保護観察所等からの依頼鑑別が増加しており,最近6年間は1万人を超えているが,その対象者のほとんどが交通事犯少年である。
 III-5表は,平成11年における家庭裁判所関係の収容鑑別のうち,鑑別判定を終了した少年について,鑑別判定と審判決定等との関係を見たものである。

III-5表 鑑別判定と審判決定等との関係

 在宅保護相当と判定された者では,81.2%が保護観察に,10.6%が決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に,それぞれ付されている。また,少年院送致相当と判定された者では,53.7%が少年院に送致されているが,25.1%が保護観察に,16.8%が前記の試験観察に,それぞれ付されている。