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 平成12年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/1 

第2節 少年事件の検察及び裁判

1 少年事件の検察

 III-22図は,昭和25年以降の犯罪少年の検察庁新規受理人員及び検察庁新規受理人員総数に占める少年の比率(少年比)を見たものである。

III-22図 犯罪少年の検察庁新規受理人員の推移

 少年の新規受理人員総数は,昭和40年に79万3,318人と最高に達した後減少したが,50年以降増加して,58年に60万1,572人と次のピークに達した後,平成7年まで減少した。その後,8年以降は増加を続けていたが,11年の少年の新規受理人員総数は,前年より1万8,835人減少して,27万9,774人となり,少年比は12.8%(前年14.2%)となっている。そのうち,刑法犯は18万4,087人(少年比17.8%),特別法犯は9万5,687人(同8.3%)である。また,交通関係業過を除く刑法犯は14万3,569人(同52.9%),道交違反を除く特別法犯は7,537人(同8.2%)となっている。
 III-23図は,最近10年間の犯罪少年の検察庁新規受理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。)について,年齢層別にその推移を見たものである。いずれの年齢層においても,平成3年から7年までは減少傾向を示し,その後は増加傾向が続いていたが,11年は,前年と比較すると,年少少年が8.7%,中間少年が9.7%,年長少年が8.0%,それぞれ減少している。

III-23図 年齢層別犯罪少年の検察庁新規受理人員の推移

 III-24図は,最近5年間における主要罪名別の犯罪少年の検察庁新規受理人員及び少年比の推移を見たものである(巻末資料II-2参照)。

III-24図 主要非行名別犯罪少年の検察庁新規受理人員及び少年比の推移

 殺人は,新規受理人員,少年比ともに増減・上昇低下を繰り返している。強盗は,新規受理人員については,相当な増加傾向を示しているが,少年比については,平成9年に50%を上回ったほかは,30%台から40%台で推移している。傷害は,新規受理人員,少年比とも増加・上昇を続けていたが,11年は,前年よりいずれも減少・低下している。放火は,新規受理人員,少年比とも,ほぼ横ばいである。窃盗は,新規受理人員,少年比ともに増加・上昇傾向にあったが,11年は,前年よりいずれも減少・低下している。交通関係業過は,新規受理人員については,減少を続けていたが,11年は,前年より増加し,少年比については,低下を続けている。覚せい剤取締法違反は,新規受理人員,少年比とも9年までは相当な増加・上昇を示していたが,その後はいずれも減少・低下傾向にある。道交違反は,新規受理人員については,9年まで増加した後,減少に転じ,少年比については,一貫して低下している。
 III-25図は,最近5年間における犯罪少年の検察庁新規受理人員について,主要罪名別に年齢層別構成比の推移を見たものである(巻末資料III-8参照)。

III-25図 検察庁新規受理犯罪少年の主要罪名・年齢層別構成比の推移

 殺人は,平成8年を除いて,年長少年の構成比が50%前後で推移している。強盗は,中間少年の構成比が40%台で推移しており,一貫して他の年齢層より高い。傷害は,年長少年の構成比が一貫して低下する一方,年少少年の構成比は一貫して上昇しており,11年には,それまで最も構成比が高かった中間少年を上回っている。放火は,中間少年の構成比が上昇傾向にあり,年少少年及び年長少年の構成比は上昇低下を繰り返している。窃盗は,一貫して中間少年,年少少年,年長少年の順で構成比が高い。交通関係業過及び道交違反は,年齢層が高いほど,構成比も高く,特に交通関係業過において,その傾向が強い。覚せい剤取締法違反についても,同様の傾向が見られる。
 検察官は,少年事件を家庭裁判所に送致するときに,少年の処遇に関して意見を付するが,平成11年における交通関係業過及び道路交通法違反事件を除く家庭裁判所終局処理人員のうち,刑法犯及び特別法犯について,検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と,家庭裁判所の終局処理結果における,これら3種の処分の比率とを比べると,すべての罪種・年齢層において,家庭裁判所が検察官送致又は少年院送致に付した比率は,検察官がこれら各処分相当の意見を付した比率を下回っている。殺人及び強盗の凶悪事犯並びに年長少年による刑法犯及び特別法犯を除き,家庭裁判所が保護観察に付した比率も,検察官が保護観察相当の意見を付した比率より低い(巻末資料III-9参照)。
 家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,平成11年における検察庁処理状況を見ると,起訴人員総数8,320人のうち,97.6%は交通関係業過又は道交違反である。起訴された少年のうち公判請求された者の比率は,総数では3.6%(刑法犯では46.2%,特別法犯では0.9%)にとどまり,その他は略式手続により処理されている(巻末資料III-10参照)。