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 平成12年版 犯罪白書 第2編/第5章/第3節/2 

2 保護観察の状況

(1) 保護観察事件の動向

 本項では,仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者を中心に保護観察事件の動向について概観する(保護観察処分少年及び少年院仮退院者については,第3編第2章第6節2参照。)。
 II-17図は,昭和55年以降に保護観察所が新規に受理した保護観察対象者の人員を,仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者の別に示したものである(巻末資料II-12参照)。

II-17図 保護観察新規受理人員の推移

 仮出獄者は,最近は1万2,000人台で推移していたが,平成11年には前年より308人(2.4%)増加して,1万3,256人となっている。
 保護観察付き執行猶予者については,平成元年以降5,000人前後で推移しており,11年には前年より46人(0.9%)減少して,5,236人となっている。
 なお,近年,婦人補導院仮退院者については,受理人員がない。
 II-18図は,平成11年における新規受理人員の罪名別構成比を見たものである。仮出獄者,保護観察付き執行猶予者のいずれも,窃盗及び覚せい剤取締法違反の比率が高くなっている。

II-18図 保護観察対象者の罪名別構成比

 II-19図は,平成11年の新規受理人員を年齢層別に見たものである。仮出獄者では,40歳以上の者が45.9%を占めているのに対し,保護観察付き執行猶予者では,29歳以下の者が46.6%を占めている。

II-19図 保護観察対象者の年齢層別構成比

 II-20図は,仮出獄者について,最近10年間の新規受理人員を保護観察期間別構成比で見たものである。

II-20図 仮出獄者の保護観察期間別構成比

(2) 保護観察処遇の状況

ア 成績良好者に対する措置

 保護観察の期間中に,行状が安定し,再犯のおそれがなくなったと認められる者に対しては,次のような措置(良好措置)が執られる。
[1] 仮出獄者
刑の短期を経過した不定期刑仮出獄者について,刑の執行を受け終わったものとする不定期刑終了
[2] 保護観察付き執行猶予者
保護観察を仮に解除する仮解除
 平成11年に執られた良好措置は,不定期刑終了はなく(前年2人),仮解除569人(同606人)となっている(保護統計年報による。)。

イ 成績不良者に対する措置

 保護観察の期間中に,遵守事項違反,再犯等があった者に対しては,次のような措置(不良措置)が執られる。
[1] 仮出獄者
所在不明になった者について,刑期の進行を止める保護観察の停止
行刑施設に再収容する仮出獄の取消し
[2] 保護観察付き執行猶予者
行刑施設に収容する刑の執行猶予の取消し
[3] 婦人補導院仮退院者
婦人補導院に再収容する仮退院の取消し
 平成11年中に執られた不良措置は,保護観察の停止が617人(前年654人),仮出獄取消しが927人(同927人),刑の執行猶予の取消しが1,526人(同1,608人)となっている(保護統計年報による。)。
 なお,保護観察対象者が,一定の住居に居住しない場合や,遵守事項に違反したと疑うに足りる十分な理由があって,かつ,保護観察所の長の呼出しに応じないなどの場合には,裁判官の発する引致状により引致を行い,さらに,不良措置の審理を開始する旨の決定により,一定の期間,所定の施設に留置する措置が執られる。保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含めて,平成11年において引致された者は181人(前年179人),留置された者は133人(同135人)である(保護統計年報による。)。

ウ 応急の救護・援護

 保護観察官及び保護司は,保護観察対象者が,病気,けが,適当な住居や職業がないなどの事情により,その更生が妨げられるおそれがある場合には,公共の福祉機関等から必要な援助が得られるように助言・指導を行っているが,その援助が直ちに得られない場合,又は得られた援助だけでは十分でないと認められる場合には,保護観察所において,具体的な援助を行っている。これを応急の救護・援護といっている。
 応急の救護・援護には,[1]保護観察所が自ら行う食事・衣料給与,医療援助,帰住旅費支給等の一時保護,及び[2]更生保護施設や個人に委託して行う継続保護があるが,平成11年の実施人員は,II-25表のとおりである。

II-25表 救護・援護の措置の実施人員