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2 犯罪または非行少年の増加 まず第一に指摘すべきことは,刑法犯により警察に検挙された一四才以上の犯罪少年の増加の現象であるが,これについては,既に第一編第一章において述べたので,ここではもう少し範囲を拡げて,その他の非行少年を中心として考察を進めよう。
非行少年の範囲は,必ずしも明確でないことは,さきに触れたところであり,一般的には学校における怠学,職場の怠業などから,けんか,凶器所持,不良交友,家出,窃盗,たかり,無免許運転,スピード違反などにいたるまで,多種多様な行為内容を含んでいる。これらの「犯罪少年予備軍」ともみられる非行少年たちの,数と実態の全ぼうを正確には握することは困難であるが,統計資料で明らかになっている部分について展望してみよう。 まず一四才未満で刑罰法令に触れる行為をした触法少年は,昭和三六年には六〇,〇七八人,将来犯罪を犯すおそれがあると認められたぐ犯少年は七九八,一一八人,道路交通法その他の特別法令に違反した一四才以上の少年は,七三一,四九一人となっている。このような非行少年たちは,合わせて一,五八九,六八七人という数となるが,これに第一編第一章で述べた同年度の犯罪少年を加えると,実に一,七四八,五七一人という膨大な数となる。この数は八才から一九才までの少年人口一,〇〇〇人あたり,七一・一人の割合である。これらの中には,ひとりで何種類かの非行または犯罪を犯して,重複して計算されている者も若干あると考えられるが,延べ人数にして約一四人にひとりは犯罪または非行少年であるということとなっている。 このほかにも,たとえば警察で昭和三六年に保護された家出少年は,四一,一八九人,文部省調査局の調査によれば,全国小,中学校で年間五〇日以上長期欠席した児童生徒は,一四七,七三一人となっており,さらにはまた,統計にあらわれない問題少年ないしは潜在的非行少年が,相当数存在していることは容易に想像されるところであって,数的にみた少年問題の重大さは,あらためて認識し直さなければならない現状である。 III-1表によって,これらの少年たちの最近四年間のすう勢をみると,触法少年は昭和三三年に比し昭和三六年には数の上で二六,六九五人,指数で八〇の増加となり,ぐ犯少年は,数で七七,五一二人,指数で一一の増加であり,特別法犯少年は,数で三〇七,二二三人,指数で七二の増加を示している。触法,持別法犯少年は累年増加の一途をたどっているのに対して,ぐ犯少年は昭和三六年において,それまでの増加の勢いが停止し,やや減少していることが注意されるが,これは先にも述べたように,ぐ犯行為の内容が必ずしも明確に規定されておらず,第一線警察官の判断の基準にも,かなりの差がみられると考えられるため,表面にあらわれた数字からだけでは,明らかな結論を下すことはできない。しかし非行少年全体としてみた場合,最近四年間における数的な増加の傾向は,明らかに認められるところであり,とくに一四才未満の触法少年および道路交通法などの特別法に違反した少年が,それぞれ二倍に近く増大してきていることは,注目されなければならない。 III-1表 犯罪非行少年検挙人員数および増加指数(昭和33〜36年) |