第一編 総論―犯罪の概観
第一章 最近における犯罪の傾向 犯罪現象または犯罪の傾向は,急激な社会情勢の変動でもないかぎり,そう一年ごとに著しい変化を示すものではない。本年度の犯罪白書で取り扱う犯罪の概観は,主として昭和三六年におけるそれである。これは,犯罪統計,検察統計その他の関係統計資料のおもなものが,同年の分までしか発表されていないため,統計を中心としか犯罪現象をながめるかぎり,昭和三六年を中心としなければならなかったからである。しわし,昨年度の犯罪白書においても指摘したように,犯罪の傾向に新しい変化があらわれるときには,まずその発芽といったものが生じ,これが時の経過とともに,徐々に発展してゆくという過程をとるのが普通であるわら,犯罪現象ないしは犯罪の傾向を正しく理解するためには,時の流れにおいてこれをとらえることが必要である。 そこで,まず最初に戦後におけるわが国の犯罪現象の推移をながめ,さらに本年度の犯罪白書において重点をおいた,少年犯罪および麻薬犯罪について,その最近における傾向にふれてみることとしよう。
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