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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/1 

第4節 検挙補導少年の特質

1 女子少年の非行

(1) 刑法犯及び特別法犯の動向

 戦後の少年非行の動向において特徴的なことの一つに,女子少年による非行の増加が挙げられる。III-15図は,昭和25年以降における男女別の少年刑法犯検挙人員指数(25年を100とする。)及び女子比(本節では,少年全体に占める女子少年の比率をいう。)の推移を見たものである。

III-15図 男女別少年刑法犯検挙人員指数及び女子比の推移(昭和25年〜平成9年)

 男子の検挙人員の指数が70台から150台の間で上昇低下を繰り返しているのに対し,女子は昭和40年代後半から急激に上昇し,ピーク時の63年には422に達した。その後,平成5年にかけて低下したが,6年以降は再び上昇傾向にあり、9年は376と急上昇している。女子比は,昭和46年に10%を超え、51年以降は、起状を示しながらも20%前後で推移し,平成9年には25.1%と最高値に達している。
 III-1表は,昭和53年以降における交通関係業過を除く女子少年刑法犯検挙人員の罪名別構成比を見たものである。

III-1表 交通関係業過を除く女子少年刑法犯検挙人員の罪名別構成比(昭和53年〜 平成9年)

 この20年間の女子少年刑法犯検挙人員は,昭和58年に5万4459人と最高値を示した後減少したが,63年には再び5万人を超えた。その後減少していたものの,平成6年に増加に転じ,9年には8年ぶりに4万人を超え,4万4007人となっている。
 罪名別に見ると,どの年次も窃盗が圧倒的に多いが,その比率は,昭和53年の93.3%から平成4年の76.7%までおおむね低下していたものの,5年以降は緩やかに上昇し,9年には81.2%となっている。一方,横領(遺失物等横領を含む。)の比率が年を追って上昇し,この二つの罪名で,全体の90%前後を占める状況が続いている。
 また,傷害,恐喝,暴行の粗暴犯については,昭和53年には3,6%と低い比率であったものの,58年に8.0%を超え,59年には8.7%とピークに達したが,その後低下し,平成9年には4.8%となっている。
 一方,平成9年の女子少年の交通関係法令を除く特別法犯の送致人員は2553人(前年2820人,前年比9.5%減)で,そのうち毒劇法違反が1449人(同1816人,同20.2%減)で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反742人(同676人,同9.8%増),その他362人(同328人,同10.4%増)となっており,薬物事犯少年が圧倒的多数を占めている。毒劇法違反及び覚せい剤取締法違反の女子比を見ても,それぞれ28.7%及び46.5%(前年31.7%及び47.1%)と高くなっており,薬物事犯における女子比の高いことが,女子非行の特徴の一つであるといえる。

(2) 薬物事犯

III-16図 覚せい剤事犯の女子少年送致人員及び女子比の推移(昭和53年〜平成9年)

 年送致人員及び女子比の推移を見たものである。
 最近20年間の女子少年による覚せい剤取締法違反の送致人員は,昭和59年に1010人とピークに達し,その後平成2年に411人と最低値となったが,7年から再び増加に転じており,最近3年間は,それぞれ540人,676人,742人となっている。また,女子比は,昭和60年以降40%を超え,平成3年に55.6%に達した後緩やかに低下し,9年には46.5%となっている。
 III-17図は,昭和53年以降の20年間における毒劇法違反の女子少年送致人員及び女子比の推移を見たものである。

III-17図 毒劇法違反の女子少年送致人員及び女子比の推移(昭和53年〜平成9年)

 この20年間の女子少年による毒劇法違反送致人員は,平成2年に8318人とピークに達した後急激に減少し,9年には1449人となっている。また,女子比は,昭和53年の11.7%から上昇を続けていたが,平成4年に33.8%とピークに達した後低下し,9年には28.7%となっている。

(3) 性の逸脱行為

 女子少年の非行では,性の逸脱行為が問題となるが,III-18図は,昭和53年以降の20年間における,性の逸脱行為で補導・保護された女子少年の態様別人員の推移を示したものである。

III-18図 性の逸脱行為で補導・保護された女子少年の態様別人員の推移(昭和53年〜平成9年)

 昭和53年以降における補導・保護人員の総数は,59年に9813人のピークとなり・以降減少傾向を示し,平成5年には4000人を割って3946人となっている。その後一時増加したものの,9年には前年と比べて466人(8.7%)減の4912人となっている。