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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第3節/2 

2 少年矯正関係法令の制定と変遷

 少年矯正関係基本法令としては,少年院法(昭和23年法律第169号),少年院処遇規則(昭和24年法務府令第60号)及び少年鑑別所処遇規則(昭和24年法務庁令第58号)の三つが挙げられる。
(1) 基本法令の制定
 少年院法は,少年に対し,収容施設における矯正教育を徹底させ,日本国憲法の要請する基本的人権の保障を全うするため,新構想の下に少年院を設け,かつ,少年裁判所の審判前の少年を収容する観護所を設けるため,制定された。同法は,昭和23年7月に現行の少年法(本章第2節参照)と同日に公布され,翌24年1月に同法と同時に施行された。これに伴い,少年院法の前身である矯正院法(大正11年法律第43号)は廃止された。
 矯正院法と比較すると,少年院法では,[1]少年院の教育的性格が法文上明確にされ,また,教科及び職業の補導等,その教育内容が規定され,[2]混合収容を避けるとともに矯正教育を便宜にするため,年齢,犯罪傾向の程度等に応じて,初等,中等,特別及び医療の4種類の少年院が設けられるほか男女の区別がなされるなど,分類収容の原則が明示され,[3]教科教育のうち,特に義務教育の保障が掲げられ,[4]進歩改善の程度に応じて順次向上した取扱いをするなどの段階処遇の制度が導入されたことなどに特色がある。
 制定当時の少年院法は,観護の措置の一つとして送致された少年を収容する少年観護所に少年鑑別所を付設することを規定した。これは,家庭裁判所の審判前の少年を警察署の留置場に収容しておくことにより捜査機関から影響を受けることを防止し,さらに,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づいて少年の資質の鑑別を行い,少年の科学的分類と矯正教育の基礎の確立を図ろうとしたものである。
 なお,昭和24年5月,少年観護所に送致された少年の処遇を適正に行うため,少年観護所及び少年鑑別所に必要な規定を定めた少年観護所及び少年鑑別所処遇規則(後の少年鑑別所処遇規則)が制定,施行され,次いで同年9月,少年院法の運用の細則を定める少年院処遇規則が制定,施行された。
(2) 基本法令の改正とその変遷
 少年院法は平成8年末までに14回,少年院処遇規則は6回,少年鑑別所処遇規則は5回,それぞれ一部改正が行われているが,そのほとんどが制定後間もない昭和20年代に集中しており,それらの改正理由もまた当時の世相を反映している。
ア 少年院法の改正
 昭和24年5月には,少年観護所を整備する時間的余裕や予算措置が十分伴わないこと並びに特別少年院及び女子の医療少年院について収容力・設備が十分でないことから,暫定的かつ条件を付した上で,[1]少年院又は拘置監の特に区別した場所を少年観護所に充てることができることとする,いわゆる代用少年鑑別所制度,及び[2]少年を収容する監獄の特に区別した場所を特別少年院に充てることができることとする,いわゆる代用特別少年院制度が導入され,さらに,[3]男子の医療少年院を区分して男女の別に従って少年を収容できるようにする,などとされた。
 次いで昭和25年4月の改正では,[1]一般少年鑑別の規定が設けられ,少年鑑別の施設が広く社会の利用のために開放され,[2]非行の進んでいる少年の他の少年への影響に配慮し,特別少年院対象者の最低年齢の制限がそれまでの「おおむね18歳以上」から「おおむね16歳以上」に引き下げられた。また,少年観護所と少年鑑別所が統合され,名称が「少年保護鑑別所」と変更されたのもこの改正による。
 昭和26年3月には,送致日から数えて6月間に限り認められていた20歳を超えての収容継続が1年間に延長されるなどの改正が行われた。これは同年1月に,少年法において18歳未満の者を少年として扱う旨の暫定的措置の終期が到来した(本章第2節3参照)ことから,20歳近くで収容される少年が増加することを考慮した改正である。
 昭和28年7月の改正では,24年の改正の際に期限が設定され,その後も延長されていた暫定的な規定が廃止されることに伴い,医療少年院について,男女を分隔する施設がある場合には,必ずしも男女の別に従って設ける必要がないものとするなどの規定が設けられた。
 昭和30年8月の改正では,少年院在院者が職業補導を受ける際に死傷した場合の手当金の支給について規定されるとともに,当時の少年院の状況にかんがみ,暴行等のおそれがある場合の手錠使用の規定,少年院への連戻しについての措置が明らかにされるなどした。
イ 少年院処遇規則及び少年鑑別所処遇規則の改正
 昭和27年7月に公布された法務府設置法等の一部を改正する法律により,「少年保護鑑別所」は,「少年鑑別所」と名称が改められた。これに伴い,「少年保護鑑別所処遇規則」も名称の変更がなされ,「少年鑑別所処遇規則」と改められた。
 少年院処遇規則及び少年鑑別所処遇規則の改正には,少年法や少年院法の改正に伴って行われたもののほか,少年院外における矯正教育の実施の規定を設けた昭和49年の少年院処遇規則の改正,それまで自分で賄うこととされていた衣類や寝具を国が貸与又は給与するなどの規定を設けた26年の少年保護鑑別所処遇規則の改正等がある。