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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/3 

3 少年法及び関係法令の改正

 昭和24年1月に施行された少年法は,少年年齢を20歳未満にまで引き上げたが,裁判官の充員や少年観護所の増設等,人的物的機関が整備されるまでの暫定措置として,同法施行後1年,すなわち24年末までは,従来どおり18歳に満たない者を少年として扱うこととされた。
 少年法は,その制定後,平成9年6月末までの間に,16回にわたる部分的な改正が行われているが,その概要は以下のとおりである。
 少年法施行前の昭和23年12月の一部改正は,少年法と同時に制定されることが予定されていた犯罪者予防更生法(本章第4節1参照)の立案が遅れたことにより,少年法中の規定を読み替えるためのものであるが,この読み替えのための規定は,24年5月に公布された犯罪者予防更生法の施行(24年7月)に伴って削除された。
 昭和24年6月には,[1]児童福祉法との間の調整を図り,14歳未満の者は刑罰法令に触れる行為をした者(触法少年)であっても原則として児童福祉法上の措置を優先させる一方,都道府県知事又は児童相談所長が,たまたま,児童の行動自由を制限し,又はその自由を奪うような強制的措置を必要とするときは,原則的に事件を家庭裁判所に送致しなければならない旨の規定を設け,[2]家庭裁判所が,犯罪少年又は触法少年について,保護処分その他の決定をする場合に,刑罰法令に触れる行為を組成した物等を没取することができる旨の規定を設け,[3]少年観護所収容の一時継続の規定を設け,[4]家庭裁判所に公訴を提起しなければならない成人の刑事事件の範囲を広げるなどの一部改正法が公布・施行されている。また,24年12月には,施行後「1年間」は18歳未満の者を少年として扱う旨の規定について,12年間」とする改正がなされ,これによって25年末までは,18歳未満の者が少年として扱われることとなった。
 昭和25年4月及び5月には,裁判所法等の一部改正,保護司法(本章第4節1参照)の制定に伴う3回にわたる改正がなされ,[1]家庭裁判所の少年保護司が少年調査官と改称され,[2]少年観護所が少年保護鑑別所と改められ,[3]司法保護委員が保護司と改められるなどしている。
 昭和26年3月には,裁判所法等の一部改正に伴い,少年の福祉を害する成人の刑事事件の裁判において,禁錮以上の刑を科するのを相当と認めるときは,事件を地方裁判所に移送しなければならないとされていた規定を削除する改正(同年4月施行)がなされ,これによって,家庭裁判所においても禁錮以上の刑を科することができることとされた。
 昭和27年7月には,法務府設置法等の一部改正に伴い,少年保護鑑別所が少年鑑別所に,地方少年保護委員会及び少年保護観察所が地方更生保護委員会及び保護観察所に,それぞれ改められた。28年7月には,少年院法の一部改正に伴う改正,29年5月には,裁判所法の二部改正に伴う,少年調査官を家庭裁判所調査官とする改正,同年6月には,警察法の施行に伴う改正がなされている。
 以上の昭和20年代における部分改正を経て,少年に関する現行の処遇制度及び刑事手続が確立した。少年法は,その後,60年6月に公布された雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律(昭和60年法律第45号)の施行に伴う改正,62年9月の労働基準法の一部改正に伴う改正,平成7年5月の刑法の一部改正(第1編第2章第1節2参照)に伴う改正がなされている。
 平成9年6月には,児童福祉法等の一部を改正する法律(平成9年法律第74号)が公布(10年4月施行)され,教護院及び養護施設について,それぞれ,児童自立支援施設,児童養護施設と改称されるとともに,児童の自立支援を目的とする施設であることが明確化された。これに伴って,少年法の関係規定の整備が行われた。
 なお,平成4年6月には,少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成4年法律第84号)が公布(同年9月施行)され,少年の保護事件に関する手続において,審判に付すべき少年に該当する事由が認められるに至らなかった少年等に対し,その身体の拘束等に対する補償を行う措置が定められた。(本編第7章第1節4参照)