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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第3節/1 

1 行刑関係法令の制定と変遷

 現行の行刑関係基本法令としては,監獄法(明治41年法律第28号),監獄法施行規則(明治41年司法省令第18号)及び行刑累進処遇令(昭和8年司法省令第35号)の三つを挙げることができる。
(1) 基本法令の制定
 監獄法は明治41年3月に公布され,同年10月に刑法とともに施行された。同法が規定する事項は,監獄の種類に始まり,収監や釈放等の刑事司法手続に関するもの,拘禁,作業,教育等,在監者の所内生活全般に関するもの,その他施設運営の管理等に関するものなど多岐にわたっている。同法の特色としては,[1]監獄が懲役監,禁錮監,拘留場及び拘置監の4種と規定され,[2]男監と女監が,また,少年については特設監獄が設けられ,[3]拘禁方法の標準,作業賦課の基準が定められ,作業収入はすべて国庫の所得とされ,行状,作業の成績等を考慮して作業賞与金が支給されることなどを規定していることが挙げられる。
 この監獄法を実施する上での細則を定めた監獄法施行規則は,監獄法と同日に施行された。
 行刑累進処遇令は,昭和9年1月に施行された。同令は,処遇段階に応じた責任の加重と処遇の緩和を通じ,受刑者の自発的な改善への努力を促進し,社会適応化を図ることを目的としており,処遇に人道主義的な改善施策を導入したものである。また,同令は分類制度を累進処遇の前提として制度化し,分類調査は関係諸科学の知識を基礎とするよう定めるなど,処遇の科学化をも図った。
(2) 基本法令の改正とその変遷
 監獄法については,昭和22年から28年にかけて6回にわたり,いずれも関係法律の制定に伴う小規模な改正が行われているが,施行後約90年間実質的な改正を見ることなく今日に至っている。そのため,同法の内容・形式共に時代に適合しなくなっている上,関係省令や訓令通達等が多々発出され,法令の体系が複雑で分かりにくくなっている。そこで,刑務所や拘置所等の刑事施設の適正な管理運営を図るとともに,被収容者の権利義務の明確化,被収容者の法的地位や特質に応じた適切な処遇等,被収容者の処遇全般にわたり大幅な改善を図るため,監獄法の全面改正に向けた検討が進められている。
 監獄法施行規則の一部改正は,終戦後から平成8年末日までの間に28回(制定後42回)を数える。特に昭和20年代は頻繁に改正が行われたが,その主なものを挙げると,赭色(赤土色)であった受刑者の衣類が浅葱色に変更された22年の改正,被告人の弁護人との接見において刑務官の立会を許さないとした23年の改正が挙げられる。41年に行われた改正は,ほぼ全条にわたる大幅なものであり,戒護の原則を緩和しての一部受刑者に対する開放的処遇への道の拡大,それまで禁止されていた一般新聞紙の閲読禁止の解除や丸刈り以外の調髪の許可,独居拘禁期間の大幅短縮,衣類・寝具の色彩の特定の廃止など,種々の生活上及び処遇上の充実向上を図るものであった。49年の改正においては,累進上級者に限って許可されていた自己労作(受刑者が余暇時間に自己の収支において行う物品の製作その他の労作(作業))を,条件を付した上で他の受刑者にも認めるなどしている。
 行刑累進処遇令については,終戦後から平成8年末日までの間に4回(制定後5回)にわたり一部改正が行われてきた。その主なものとしては,居室の無施錠等累進上級者に対する処遇又は集会や競技会等少年受刑者に関する処遇の特例を,処遇上の必要があればその他の者にも適用できることとした昭和49年の改正が挙げられる。