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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第五章/三/3 

3 更生保護会による任意保護

 更生緊急保護は保護観察と同じく国の責任に属する業務であるが,現実には,保護観察中の応急救護を要する者に対して,保護観察担当者その他の者の負担において金品給与などの保護措置が行なわれていると同様に,更生保護会では,国の委託にかかる保護のほかに,更生保護会自体の負担において任意保護が行なわれている。国の委託は予算上の理由から保護の日数や措置方法に制限があるが,本人の犯罪性を除去してその更生をはかるためには,委託期間の経過後になお宿泊の供与,補導などを続けねばならない場合も多く,委託期間中でも,旅費や衣料やその他の金品の給貸与など,委託外の保護措置が必要になる場合がある,。そのような場合に,更生保護会は自発的に自己の負担でその保護をしている。
 更生保護会の任意保護の状況はVI-63表のとおりで,年間保護人員一万七千人をこえている。その中には,保護観察の期間外または更生緊急保護の該当期間外の者も含まれている(合計二一・二%)が,大多数(七八・八%)は,応急の救護・援護または更生緊急保護の対象となり得る者である。

VI-63表 更生保護会の任意収容保護の人員(昭和34年)

 どのような任意保護が行なわれているかはVI-64表でわかる。全員がある期間にわたり任意保護としての食事付宿泊の供与を受け,そのうち七千余人はその後に宿泊供与を受け,かなりの数の者は,その間に食事,旅費,衣料などの給貸与を受けている。その間あわせて,補導も行なわれていることはいうまでもない。

VI-64表 更生保護会の任意保護の措置別保護回数(昭和34年)

 昭和三四年の実績でみると,更生保護会が委託外の収容保護をした者の数一七,三二三人は,更生保護会が同年中に委託に基づいて食事付宿泊供与をした人員二六,三八七人の六五・六%にあたる(VI-65表)。このことは,国が更生保護会に対して食事付宿泊供与の委託をした人員の六五・六%については,その委託期間の経過後もなお食事付宿泊を与える必要が認められたが,国がそれを与えないので,更生保護会が自己の負担でそれを与えた,ということを示しているようである。国の委託の日数(一人平均一一日)が果たして適当であるかどうか,検討を要するところであろう。

VI-65表 更生保護会の収容保護回数と日数(昭和34年)