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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/三/2 

2 仮出獄者の選択

(一) 選択の二段階

 受刑者を仮出獄によって出所させるかどうかの選択は,通例は二つの段階で行なわれることになっている。第一の段階は,刑務所で仮出獄の申請をするかどうかをきめるとき,第二の段階は,地方更生保護委員会で審理決定をするときである。大多数の受刑者はこの二つの段階で,仮出獄をさせるかどうかの選択を受けている。ただ,刑務所での選択で仮出獄の申請から除かれた者は,地方委員会が職権審理をしない限り,地方委員会の審理にかからないから,仮出獄から除かれるとになる。満期出獄者の大部分は実際上この部類に属する。反対に,刑務所の選択では仮出獄相当と認められて申請をされたが,地方委員会の審理で不相当と判断されて仮出獄から除かれる者もある。

(二) 委員会での選択

 委員会の仮出獄事件審理による選択の状況はV-7表のとおりで,決定を受けた総人員に対する仮出獄許可人員の比率は,最近二年は九三・六%になっている(仮出獄許可決定の実人員が前表の仮出獄人員とちがうのは,許可決定の際には釈放日を指定する例になっているため,許可決定を受けた者のなかに,決定の年でなく翌年になって釈放される者があるからである)。

V-7表 仮出獄事件の許可・不許可別人員と率(昭和32〜34年)

 委員会の許可または不許可(棄却)の決定は,仮出獄か満期出獄かの最終的選択であるが,受刑者の全員について仮出獄か満期出獄かをきめるものではない。というのは,受刑者のなかには前述のように委員会の審理を経ないで満期出獄になってゆく者が少なくないからである。昭和三四年を例にとると,委員会で仮出獄か満期出獄かに選択された者は三三,八五一人であるが,刑務所から仮出獄または満期出獄で釈放された者は,それよりも一二,二七八人だけ多い四六,一二九人である。このように,委員会の選択は受刑者の全員ではなく一部の者については行なわれないので,委員会の決定総数のなかでの仮出獄許可の比率は,出所受刑者総数のなかでの仮出獄の比率よりは高い。

(三) 刑務所での選択

 出所受刑者総数のなかでの仮出獄者の比率は,刑務所で行なわれた選択の結果の比率ともちがう。刑務所での選択の比率は,刑務所が仮出獄の申請をした受刑者の数と申請をしなかった受刑者の数との比率である。昭和三四年の出所者のうちに,仮出獄申請をされた者とされなかった者とがそれぞれどの位あるかは,明らかではないが,次のように推定することができる。すなわち,出所者のうち仮出獄者三一,一八〇人はすべて申請された者であるとみることができる。このほか満期出獄者のうち,委員会の棄却決定の人員二,一五四人とほぼ同数の者は,これも申請された者であるとみることができる。したがって,申請をされた者は約三三,三〇〇人であるとみることができる。そして出所者総数は四六,一二九人であったから,その差約一二,八〇〇人が申請をされなかった者であるとみることができる。申請をされた者は刑務所で仮出獄相当と判断された者であり,申請されなかった者は刑務所で仮出獄不相当と判断された者であるから,仮出獄相当が約七二・二%,不相当が約二七・八%―これが刑務所の段階で行なわれた選択の結果である。

(四) 修正率

 このように,出所受刑者の約七二・二%にあたる者が刑務所での選択の際には仮出獄相当と判断されて申請をされたが,地方委員会で審理の結果,その約六・四%の者について棄却の決定があったことは,刑務所の判断に対する修正率が約六・四%であることを示し,同時にこの修正率は,受刑者の出所総数において占める仮出獄の比率に対しては,約四・六%の修正をしたことになる。

(五) 仮出獄許可の基準

 仮出獄は,法定の条件期間を経過した者について,(イ)改悛の状があり,(ロ)仮出獄期間中再犯のおそれがないと認められ,(ハ)社会の感情が仮出獄を是認するものと認められる場合であって,(ニ)本人の自立が期待できるかまたは保護観察が本人の改善に役立つと認められるときに,これを許すとになっている。これが,仮出獄許可の基準である。