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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/三/1 

三 仮出獄―受刑者の仮釈放

1 仮出獄の増減

 受刑者の仮釈放は,従前は改悛の状のある者に対する恩典として,司法大臣の許可に基づいて行なわれていた。恩典であるために与えられる人数も少なく,与えられる仮出獄日数も少なかった。手続も今とはちがい,刑務所の長が司法大臣に上申をして,そこで書類上の審査によって許可・不許可がきまる仕組みであった。受刑者の改悛を促進するために仮釈放制度を活用する考え方が生じたのは,昭和六年以降である。昭和六年仮釈放審査規程ならびに昭和九年行刑累進処遇令の施行によってこれが具体化されてからは,仮出獄は漸増の傾向をたどってきた。
 時代を分けて,刑務所の釈放総数の中での仮出獄人員の状況をみると,V-6表のとおりである。旧制度の昭和の初めごろには,仮出獄処分は現在ほどは活用されず,全釈放人員の中での仮釈放人員の割合は約九%であった。戦争の末期から終戦にかけて仮出獄の割合が約六三%にまで急昇したのは,受刑者の更生をはかるためというよりは刑務所の過剰拘禁の緩和のために,仮出獄処分が利用されたものである。

V-6表 釈放者の仮出獄・満期出獄別人員と率(昭和6〜10年・20〜24・25〜27年・29〜31年の平均および昭和32〜34年)

 犯罪者予防更生法の施行(昭和二四年七月)によって性格と組織をあらためた現行の仮出獄制度は,もはや恩典の制度ではなく,再犯防止を主眼とする犯罪対策の一環であるという自覚の上に立っているから,受刑者に仮出獄を許すかどうかの判断は,もっぱら,仮出獄を許すことが再犯の防止に役立つかどうかの観点から行なわれている。すなわち,昭和二五年から昭和二七年までの三年間の平均は,六七・五%,昭和二九年から昭和三一年まで三年間の平均は六四・五%,その後の三年間の平均は,約六八%である。