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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第三章/八/1 

八 矯正施設の建築

1 刑務所建築

(一) 老朽化

 わが国の行刑施設が,世界各国の行刑思潮であった改善主義を積極的に取り入れ,大正の末期から昭和の初期にかけて,行刑建築は徹底した目的建築であるとの指標のもとに,府中,横浜,東京拘置所等一〇余の刑務所が改善されたのであるが,終戦時には,戦時中の空襲対策としての施設疎開のための解体,戦災による焼失,戦後における連合国による接収等により,戦前保有した施設の収容能力の約四割を失った。このため戦後においては,収容者の激増に伴う収容過剰の応急対策として,とりあえず収容力の増加に努力し,同時に戦災による破壊施設(本所二五,支所一一)の復旧に専念した。そして,今日においては,収容者の増加に対する拘禁力の確保については一応所期の目標を遂げることが出来たのである。しかし,戦後,分類制度を始めとし,処遇の実際において新しい企画の導入がなされ,これに伴い従来の行刑施設ではこれらの企画を実現することが困難になってきた。さらに,現在使用中の建物は,明治年間に建築されたものが少なくなく,木造建物が全体の六三%におよんでいる。その構造も近代行刑の要請にそぐわぬ点が多多ある。これらの不適当な老朽施設を改築し近代的要求を満たす必要があるのであるが,それは長期にわたる整備計画により,逐次解決していかなければならない問題である。

(二) 環境の不適当

 刑務所は,その性質上おおむね都市郊外の地を選定して建設されたものであるが,その後の都市発展に伴って,その場所が次第に都市の中心部となり,あるいは繁華街に近接するに至り,地元における都市計画または都市発展の見地から,施設の移転を要望する声が特に強まっている。移転を要請されている施設の主なるものは,拘置所,刑務所本,支所をあわせて二十余におよぶ。昭和三五年度予算においては,国庫債務負担行為方式による一定の限度額の承認により,名古屋,福岡両刑務所の移転が実現する運びとなった。この新しい方式が実現したことは,刑務所移転問題に対して一応明るい希望が生まれたといえるわけである。

(三) 構外作業場

 構外作業場として現在運営されつつある施設はIV-27表のとおりであるが,現況としては,受刑者の社会復帰の準備のための中間施設として完備されていると,自他ともに認められるところは少ない。これら中間的処遇として重要な意義をもつ構外作業場も大半は木造施設であり,その改善は,今後推進すべき課題の一つである。

IV-27表 構外作業場の現況(昭和35年4月現在)

(四) 新築施設

 最近完成された小倉拘置所は高層建築であって,わが国での初めての試みとして検察庁との合同庁舎である。そのほか,最近竣工した,大分,長野,福島の各刑務所等は十分誇るに足る構造内容を具備している。