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2 勾留理由の開示 勾留されている被疑者または被告人は,裁判官または裁判所に対して勾留理由の開示を求めることができ,この請求があったときは,勾留理由開示手続が公開の法廷で開かれ,裁判官または裁判所から勾留理由が告げられることになっている。この手続で,時に法廷が混乱したり,紛糾したりして,いわゆる荒れる法廷が顕出することがある。
昭和三四年における勾留理由開示請求事件の総数は,最高裁判所事務総局刑事局の「昭和三四年における刑事事件の概況」(法曹時報一二巻一〇号)によると,被疑者について一八九件,被告人について二一件,合計二一〇件であって,起訴前の勾留に関するものが圧倒的に多いが,このうち公安犯罪に関するものは,法務省刑事局の調査によると,合計一九二件に達しているから,勾留理由開示請求事件の総数の約九一・四%にあたることとなる。昭和三四年における公安犯罪の勾留人員は,前述のように三一七人であるから,その約六〇・六%にあたる者が勾留理由開示手続を請求したことになり,この手続はもっぱら公安犯罪によって勾留された者に利用されている実情にあるといえるのである。 荒れる法廷が顕出した場合には,法廷等の秩序維持に関する法律によって裁判所または裁判官が制裁を科することができるものとされている。すなわち,秩序を維持するために裁判所が命じた事項を行なわず,もしくはその執った措置にしたがわず,または暴言,暴行,けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し,もしくは裁判の威信をいちじるしく害した者に対しては,二〇日以下の監置または三万円以下の過料という制裁を科することができるのである。 法廷等秩序維持に関する法律が昭和二七年施行されて以来,昭和三五年末までに科せられた制裁は,III-7表のとおり,合計三三人であるが,このうち公安犯罪に関するものは,一二人であるからその約三六・四%がこれにあたることになる。全犯罪のうちで公安犯罪の占める比率は,〇・二%ないし〇・三%であるから,この比率は公安犯罪にとってきわめて高いものということができ,公安犯罪に,いわゆる荒れる法廷が多くみられることを物語るものといえよう。 III-7表 法廷等秩序維持法による制裁を科せられた人員(昭和27〜35年) |