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3 証人尋問の請求(刑事訴訟法第二二六条および第二二七条) 捜査官は,参考人の出頭を求めてこれを取り調べる権限をもっているが,犯罪の捜査にかくことのできない知識をもっていると明らかに認められる者が,任意の出頭または供述を拒んだ場合には,刑事訴訟法第二二六条により,検察官から裁判官に対して,その者を証人として尋問することを請求することができる。この請求があったときは,裁判官はその者を召喚し,宣誓させたうえ,尋問するのである。また,捜査官の取調に対して任意の供述をした参考人が将来公判廷に出て証人として証言する場合には,被告人その他から圧迫を受け,捜査官の取調に際して述べたところと異なる供述をするおそれがあり,かつ,その参考人の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められるときには,検察官は,刑事訴訟法第二二七条により,その参考人を証人として尋問することを裁判官に請求することができるのである。この場合も,裁判官はその者を召喚して,宣誓のうえ,尋問するのである。
刑事訴訟法第二二六条および第二二七条に基づく証人尋問の総数と,このうち公安犯罪に関するものの数を昭和三四年につき示せば,III-8表のとおりである。これによると,第二二六条による証人尋問の総数は,六三人であるが,このうち公安犯罪に関するものは,その六六・七%にあたる四二人であるから,その七割弱までが公安犯罪の処理にあたって利用されているに反して,第二二七条による証人尋問は,その総数一三〇人のうち,公安犯罪に関するものは,九・二%にあたる一二人であって,その一割弱にすぎない。このように,第二二六条は第二二七条に比していちじるしく公安犯罪において適用されているのである。 III-8表 刑訴法226条および227条の運用状況(昭和34年) では,なぜ公安犯罪について第二二六条の適用が高率なのであろうか。これは,公安犯罪が政治的または組織的な背景をもつ事件が多く,かつ,集団的または計画的に行なわれるものが少なくないので,同一組織に属しまたは利害関係をともにする参考人多数を取り調べる必要が多く,このなかには捜査官の取調を拒否するものがあるために,自ずと高率を占めるに至ったものと思われる。参考人は被疑者と異なり供述を拒否する権利はなく,真実発見のためには捜査に協力する義務のあることを前提として,これらの規定がもうけられている点を考えあわせると,この種の証人尋問が少なくないことは,必ずしも好ましい傾向とはいいがたい。 |