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2 少年の保護観察 保護観察の全般的概況については第2編第4章第2節において述べたので,ここでは保護観察処分少年と少年院仮退院者の保護観察について幾つかの事項を補足して取り上げる。
(1) 新受及び年末現在人員 昭和48年中に保護観察所が新たに受理した人員を,まず,保護観察処分少年についてみると,総数は2万686人で,前年に比べ更に3,214人(13.4%)の減少となった。他方,少年院仮退院者の新受総数は2,188人で,これも前年より352人(13.9%)減少している。48年末現在の人員では,保護観察処分少年4万1,603人(対前年比10.8%減),少年院仮退院者3,012人(同13.5%減)となっている。これらの人員が同年末現在保護観察に付されている総人員のうちに占める比率は,それぞれ57.3%及び4.2%である。
(2) 年齢及び性別 保護観察処分少年及び少年院仮退院者新受人員の最近5年間の年齢層の推移と昭和48年の性別分布は,III-104表及びIII-105表に掲げるとおりである。
III-104表 保護観察処分少年(新受)の性別・年齢層別人員(昭和44年〜48年) III-105表 少年院仮退院者(新受)の性別・年齢層別人員(昭和44年〜48年) まず,保護観察処分少年についてみると,年齢層では,逐年年少少年と中間少年の比率がふえてきており,昭和48年には,両者合わせて44.0%に及んでいる。他方,同年について性別をみると,女子は727人で,総数の3.5%である。これを年齢層別にみると,女子は男子よりも中間以下の年齢層の比率が高い。一方,少年院仮退院者についてみると,年齢層では,最近3年間年少・中間少年の比率にやや上昇がみられ,昭和48年の比率はそれぞれ3.8%及び24.3%となっているが,保護観察処分少年に比べると,中間以下の年齢層の比率はかなり小さい。また,48年について性別をみると,女子は195人で,総数の8.9%を占め,保護観察処分少年の場合よりも高率である。年齢層分布では,女子は男子より中間以下の層の比率の高いことがここでもみられる。 (3) 保護観察の成績等 保護観察期間満了者の保護観察成績の概況については,先にII-103表で示したところであるが,ここでは,保護観察処分少年と少年院仮退院者の保護観察終了総数に対し,良好な状態で保護観察を終わった者の比率を最近5年間についてみることとする。
まず,保護観察処分少年の概況については,III-106表のとおりである。ここでは,保護観察の解除による終了者,保護観察の停止中期間満了となった者及び満了時の保護観察成績が良と評定された者を良好群に入れた。これによると,性別では女子,年齢層別では年少少年の良好群の比がやや小さいが,各区分とも比率は一様に上昇し,昭和48年の終了者総数に占める良好者の百分比は63.0%に及んでいる。 III-106表 保護観察終了者中良好群の百分比(保護観察処分少年)(昭和44年〜48年) 次いで,少年院仮退院者については,III-107表のとおりである。ここでは,退院の決定による保護観察終了者及び期間満了時の保護観察成績が良と評定された者を良好群としている。これによると,良好群の比率は,やはり一様に上昇傾向にあるといえよう。しかし,仮退院者の場合は,女子の良好群の比率が男子よりもやや高いこと,及び年齢層別では,年少少年の良好群の比率が他の層に比べて劣らず,年次によってはむしろ高くなっていることの二点において,保護観察処分少年の場合と傾向を異にしている。昭和48年の終了者総数を100としたときの良好群の比率は21.5である。III-107表 保護観察終了者中良好群の百分比(少年院仮退院者)(昭和44年〜48年) 他方,保護観察に付された者のうちどれくらいの割合の者が再犯により保護観察期間内に刑事処分又は保護処分を受けているかを調べたのが,III-108表である。同表は,昭和44年中に保護観察に付された保護観察処分少年2万5,999人と少年院仮退院者3,895人のそれぞれに対する48年までの処分率を年次別に示したものである。これによると,5年目に当たる48年の終わりまでに,保護観察処分少年では13.2%,少年院仮退院者では24.7%の者が再犯により新たな処分を受けている。もっとも,これら両群では,保護観察処分少年の保護観察期間の方が概して長く,また,保護観察終了後になされた再犯処分は同表に計上されていないから,両群の成行き比較には,その点の考慮が必要である。III-108表 保護観察期間中に再犯処分を受けた者の構成比(昭和44年〜48年) (4) 保護観察処分少年の概況と成行き 更に,法務総合研究所が実施中の保護観察処分少年に関する調査から,それら少年の背景と保護観察開始後2年弱の期間の成行きに関して幾つかの項目を以下に取り上げることとする。同調査は,道路交通法違反及び業務上(重)過失致死傷以外の行為によって,昭和46年12月1日以降約2か月の間に保護観察に付された全国の少年から無作為に抽出した1,494人について,48年11月10日現在で調べたものである。
最初に,これらの者の非行反復の概況を知るため,道路交通法違反を除く非行に対する過去の刑事処分・保護処分(審判不開始・不処分を便宜含めた。)の回数を調べたところ,III-109表のとおり,総数のうち42.4%はこれらの処分歴があり,過去2回以上処分を受けたことのある者は14.0%である。また,当然のことではあるが,これらの比率は年齢層が高くなるに従って漸増しており,年長少年では,処分歴2回の者が100人に11人,3回以上の者が100人に7人の割合となっている。 III-109表 保護観察処分少年の過去の処分歴(構成比)―(昭和48年) 次に,III-110表は,通常非行と関連しやすいと思われる少年の行動のうち四つの項目について,保護観察に付されるまでにそれらに該当する事実のあった者がどれくらいいるか,及びそれが保護観察の原因となった非行にどれくらい寄与しているかをみたものである。これによると,2割以上の者は薬物を濫用した経験を有し,4割弱の者は犯罪・非行集団に加入し又は接触を有している(不良交友歴というようにわくを広げれば,後者の比率は更に増大すると思われる。)。家出又は継続的放浪の経験を有する者,自動車又はオートバイに凝り余暇にそれを乗り回していた者もそれぞれ3割台に達している。更に,それぞれの行動について,それが保護観察処分の原因となった非行に何らかの形で結びついていたと認められる者は,各項目を通じ1,494人のうち7.0%ないし15.7%あった。交通犯罪を除外しても,なおかつ,保護観察処分に至った非行約7件のうち1件が遊びのドライブと関連を有することなど,時代を反映するものとして注目されるところである。III-110表 保護観察処分少年の過去の概況と非行との関連(構成比)(昭和48年) 調査対象者のうちには,就学中,家事従事中,療養中その他明らかな理由により,保護観察の開始時まで一度も就職したことのない者が199人(13.3%)あり,そのほか特に明らかな理由なしに就職したことのない者が165人(11.0%)あった。それらを除いた1,130人の就職経験者を100として,離学後保護観察開始時までの就職回数をみると,1回の者は23.1%だけであり,2〜3回(39.6%)と4回以上(37.3%)がおおむね均衡し,後者のうち5回以上の者の割合だけで全体の4分の1(24.5%)を占めており,いわゆる頻回転職傾向をかなりの者について認めることができる。1,494人の調査対象者について,保護観察当初の住居の内訳をみると,親又は配偶者(内縁を含む。)との同居が81.4%と大多数を占め,住込8.3%,兄弟その他の親族との同居3.5%と続いている。単身居住者,更生保護会居住者等もあるが,それらは少数にすぎない。 次に,これらの者の保護観察開始後約1年10か月目に当たる調査時点での成行きを示したのが,III-111表である。これによると,総数の18.1%は成績が良いための解除により,また,7.7%は再犯等による取消により,既に保護観察が終了している。4人につき3人の割合でなお保護観察が継続中で,評定の内訳は,良好40.2%,普通23.0%,不良10.6%などである。解除の率は年齢層が高くなるに従って高くなり,取消及び不良の率は中間少年において高いことなどがうかがわれる。 III-111表 保護観察処分少年の成行き(昭和48年11月10日現在) 終わりに,保護観察開始後調査時点までの間の再犯の状況について検討する。この期間に再犯のあった者は全体の32.6%で,再犯までの経過期間では,3月以内7.8%,6月以内6.2%,1年以内9.0%,1年6月以内3.7%,1年6月を超える者6.0%となっている。これを保護観察開始当初の少年の居住地域別に累積比率で示したのが,III-10図である。それにみるとおり,調査時までの再犯者の累積比率は,町村で28.0%,人口50万未満の市で33.4%,50万以上の市で37.0%となっており,大都市に向かうに従って再犯率の高くなる傾向をうかがうことができる。III-10図 保護観察処分少年の居住地域別再犯者の累積比率 |