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2 交通犯罪者に対する保護観察 昭和四二年中の保護観寮新受総人員のうち,その罪名または非行名が道路交通法違反,業務上過失致死傷および重過失致死傷である者の数は,II-100表のとおりで,同年中に交通関係の犯罪により保護観察下にはいった者は,新受総人員の二〇・三%(一二,七八一人)で,その割合は,必ずしも低くない状況である。これを保護観察種別ごとにみれば,保護観察処分少年三六・二%(一〇,五一一人),少年院仮退院者〇・三%(一八人),仮出獄者八・五%(一,六九二人),保護観察付執行猶予者七・二%(五六〇人)で,とくに,保護観察処分少年では,新受人員の三分の一以上の者が交通関係の犯罪や非行を犯した者であることを示し,注目される。
II-100表 保護観察新受人員中,交通犯罪を犯した者の数(昭和41,42年) また,道路交通法違反のみにより保護観察処分に付された少年の状況は,II-101表のとおりで,近年,顕著な増加を示している。II-101表 道路交通法違反により保護観察処分に付された少年(昭和38〜42年) 昭和四二年中の保護観察終了者のうち,その罪名または非行名が道路交通法違反,業務上過失致死傷および重過失致死傷である者の終了時の成績は,II-102表のとおりで,その成績の評定が「良」,「やや良」およびその他の良好な状態で終了した者の割合は,保護観察処分少年で,八〇・五%,少年院仮退院者で三八・九%,仮出獄者で四九・六%,保護観察付執行猶予者で五一・二%で,それぞれ全体の場合(I-98表)に比較すれば,いずれも,高率を示し,また,同じく,「不良」およびその他の不良な状態で終了した者の割合を,それぞれ全体の場合(I-98表)に比較すれば,いずれも,低率を示しており,交通関係の犯罪や非行を犯した者の保護観察成績は,比較的に良好であるということができる。II-102表 保護観察終了人員中,交通犯罪を犯した者の終了事由別状況(昭和41,42年) 交通関係の犯罪や非行を犯した者に対する特別な保護観察の方法としては,近年,集団指導を実施する庁が多くなりつつある。すなわち,本人および保護者,雇主ら十数人ないし五十人ぐらいずつを集めて,徳性のかん養,遵法精神の体得,交通法規の理解の徹底等をねらいとした講話や自動車運転の実技習得のための演習等に参加させるもので,そのための保護観察所の業務の増大等は,看過しがたいが,その実施効果は,かなりのものがあるとみられている。交通関係の犯罪や非行により保護観察処分に付された者に対しては,保護観察開始後相当期間(道路交通法違反少年の場合は,おおむね六月以上)を経過した後,保護観察成績が良好で,再犯等のおそれがないと判断される者については,相当積極的に,保護観察を解除する措置がとられている。この状況を,保護統計年報資料により,昭和四二年中に保護観察を終了した者八,四八一人についてみれば,良好解除を受けた者は,五,二一〇人(六一・四%)で,かなりの高率を示している。しかし,金沢保護観察所が,道路交通法違反のみにより保護観察処分に付された者のうち,昭和三七年一月から同三八年六月までの一年六月の間において,保護観察成績が良好で,その解除を受けた者三九六人中,管外転住等により,調査不能の者四九人を除く三四七人について,解除後一年間の状況を追跡調査した結果によると,八七人(二五・一%)が一年以内(そのうち四九人は六月以内)に再び道路交通法違反の罪を犯している事実が判明した。このことのみによって,直ちに全国的状況を推察することは適当でないとしても,良好な成績を示している対象者の処遇について,なお慎重な配慮を要することがうかがわれる。また,近年,法務省保護局が行なった調査等によれば,これらの交通関係の犯罪や非行により保護観察処分に付された者の中には,非行等の回数も多く,きちょうめんな生活態度や遵法意識にも欠け,また社会性にも乏しく,交通関係以外の犯罪や非行を犯すおそれもある者が相当含まれていることが明らかにされた。これらの対象者に相応した処遇を行ない,交通関係の犯罪や非行は犯したが,まだ,他の犯罪や非行は犯していないという段階で,その改善を図ることが,社会防衛上からも,きわめて肝要なことと思われる。 なお,仮出獄を許された交通犯罪者に対する保護観察について,昭和四二年,法務総合研究所が千葉刑務所習志野支所および中野刑務所を仮出獄した一四六人につき調査した結果によれば,仮出獄期間が一月以内の者が八九・〇%(一三〇人)で,保護観察期問が短く,継続した処遇を受けうる期間を有する者が比較的少ない状況であることが明らかにされたが,仮出獄後の帰住環境は,比較的良好で,仮出獄前に就職先の見通しのついている者も多いという状況であった。 |