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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第一章/二/6 

6 その他の刑法犯

 本項では,放火,略取・誘拐,文書偽造・有価証券偽造および賭博を,その他の刑法犯として取り上げることとする。前三者は,その数こそ,比較的少ないが,一般社会に及ぼす影響の大きい犯罪であり,賭博は,最近数年間に,急激な増加を示していることによるものである。以上のほか,贈収賄を省くことはできないが,これは,第二編第四章の二,「公務員犯罪」の項で,取り上げることとした。
 放火等その他の刑法犯の,昭和三二年および昭和三八年以降の発生件数および検挙人員の推移は,I-21表およびI-22表のとおりである。

I-21表 放火等の発生件数(昭和32,38〜42年)

I-22表 放火等の検挙人員(昭和32,38〜42年)

 まず,放火についてみると,発生件数および検挙人員ともに,おおむね減少傾向にあり,昭和四二年は,今次大戦直後数年間の時期を除いては,戦後最低の数字を示している。
 次に,略取・誘拐については,その数は,必ずしも多くはないが,連鎖反応的に発生するおそれがあるので,注意を要する。発生件数,検挙人員ともに,昭和三九年以降減少していたものが,昭和四一年に至って増加に転ずるきざしをみせ,昭和四二年においては,発生件数こそ,前年をわずかに下回ったが,検挙人員数は,むしろ,かなりの増加をみせており,今後の推移が注目される。
 文書偽造・有価証券偽造についてみると,発生件数は,昭和三九年に,一時大幅に増加したが,昭和四〇年以降減少の傾向にある。これに対し,検挙人員は,昭和四一年まで,逐年,わずかずつ増加していたが,昭和四二年には,発生件数とともに,かなり大幅な減少を示している。
 最後に,賭博についてみると,昭和二二年に,八三,二〇七人という戦後最高の検挙人員数を算して,刑法犯検挙人員総数の二割弱にまで及んだが,その後,年を追って減少していたところ,昭和三五年から増加に転じ,昭和三九年に,大幅に増加して以後,起伏はありながらも,高い水準を保っている。昭和四二年においては,発生件数,検挙人員ともに,前年より減少しているものの,この罪により検挙されるものが,一万三千人以上という数字には軽視できないものがあろう。
 賭博には,暴力団が関係するような犯情の重いものから,娯楽の度が過ぎたというような軽微なものに至るまで,多種多様であるが,最近における,賭博の検挙人員中,暴力団関係者の占める割合をみると,I-23表のとおりである。これによると,昭和四〇年までは,実数も,比率も,ともに,増加傾向にあったが,四一年以後は,大幅に減少した。しかし,その比率は,四二年において,なお二六・七%という高い数字を示している。しかも,この種の賭博は,いわば,主催者である暴力団関係者と,客となる非関係者とが,同時に検挙されることを常態とするので,賭博全般に対する暴力団体の影響力は,右の比率に現われた数字を,大幅に上回るものと考えるべきであろう。

I-23表 賭博罪検挙人員中暴力団関係者の占める割合(昭和38〜42年)